地震保険における家財(生活用動産)の損害認定基準を詳しく解説

地震保険の家財損害認定基準を解説 その他の損害保険

地震が発生すると建物や家財(生活用動産)に大きな被害が発生しますが、最近では耐震性能が高い建物が増え、建物自体には被害が発生しない場合でも、家具などの家財は転倒したり、落下したり大きな被害が出ることは珍しくありません。

特に高層マンションなどは、大きく揺れることで建物の被害を軽減する構造になっていますので、かえって中の家財に被害が発生しやすくなっています。

2016年4月に発生した熊本地震では、建物と家財の被害状況はでは、半損以上の被害は、家財が建物の約2.5倍となっています。

ここでは、地震発生時に、しっかり家財の補償を受けることができるよう、地震保険の家財の損害認定基準を詳しく説明します。

地震保険における家財の損害認定の考え方

地震保険では、被災者の生活支援と正常な生活に少しでも早く戻れるよう、地震保険の損害調査は迅速・円滑・公平な処理が求められるので、一般の罹災時の家財の損害認定方法とは異なる方法が採用されています。

なお2019年1月以降発生しる地震については、新しく改定された「新生活用動産損害認定基準」で調査されることになります。

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地震保険での家財の損害認定基準の特徴

地震保険における家財の損害認定は大きく分けて3つの特徴があります。

家財のグループ化

家財の所有状況は加入している家庭で異なりますが、家財の材質や特徴、用途、収容場所などの特徴や、過去の地震災害の損害発生状況から下記の5つのグループに分類されています。

  1. 食器類
  2. 電機器具類
  3. 家具類
  4. 身の回りその他
  5. 衣類・寝具

「代表品目」による損害品目の確認

地震保険における損害調査は、被害を受けた家財を一つ一つ調査するのではなく、上記の5つのグループごとに、一般の家庭で所有している代表的な品目を定め、その代表品目の所有有無とその損害を確認することで、その家庭全体の家財の損害を認定する方法が取られています。

各グループごとの代表品目

分類代表品目
食器類食器
調理用具
電気器具類冷蔵庫
炊飯器
電子レンジ・オーブン
テレビ
録画再生機器
パソコン
洗濯機
掃除機
冷暖房機器
家具類ダイニングセット
食器戸棚
ソファー
机・椅子
本棚
ベット
タンス
鏡台・ドレッサー
花瓶
仏壇・仏具
身の回り品その他
カバン
時計・腕時計
アクセサリー
メガネ・コンタクトレンズ
電話・携帯電話
カメラ・ビデオカメラ
DVD・CD・レコード
書籍・絵画
スポーツ・レジャー用品
寝具・衣類ふとん・まくら・シーツ
コート
スーツ・礼服
ジャンバー・ブルゾン
ズボン・スカート
Yシャツ・ブラウス
ポロシャツ・Tシャツ・トレーナー
和服・着物
マフラー・ショール・ネクタイ・スカーフ
ベルト・ハンカチ・靴下・手袋

代表品目を所有していない場合は、各分類内の実際に所有している「代表品目数」に応じて各分類の損害割合を算出します。

代表品目の損傷有無を確認する場合の注意点

家財の各グループの損害状況の確認では、例えば、食器棚が転倒して、収納してあった食器が全て破損していても、食器の一部が落下し破損しても、「食器の損害が有り」で同じ扱いになります。

また、代表品目に記載のない家財が破損していても、損害として扱いません。あくまで代表品目だけを確認します。

標準価額構成割合とは

家財(生活用動産)の標準価額構成割合とは、全家財の中で、上記グループの占める割合のことで、以下のように定められています。

分類標準価額構成割合単身者などの修正
食器類5%5%
電気器具類20%25%
家具類10%10%
身の回り品その他35%30%
寝具・衣類30%30%
合計100%100%

代表品目の損害状況による損害割合の認定

代表品目の損害状況を確認したあとは、各グループの損害割合を計算し、その割合を全て合計して、家財全体の損害割合を算出します。

  1. 各グループごとに損害率(各品目の所有品目が分母で損傷数が分子)に標準価額構成割合を乗じる
  2. 各グループの損害割合を合計して、家財全体の損害割合を出す。
  3. 家財全体の損害割合の合計で損害認定(全損・大半損・小半損・一部損または全損・半損・一部損)を行う。

地震による家財の損害の例

 代表品目被害の例
食器類食器食器戸棚が転倒して破損
調理用具 
電気器具類冷蔵庫転倒して破損
炊飯器 
電子レンジ・オーブン落下して破損
テレビ落下して破損
録画再生機器落下して破損
 落下して破損
  
掃除機冷蔵庫の下敷きで破損
冷暖房機器 
家具類ダイニングセット 
食器戸棚転倒して破損
ソファー 
机・椅子 
本棚本棚が転倒して破損
ベット 
タンス 
鏡台・ドレッサー 
花瓶花瓶が落下して破損
仏壇・仏具所有なし
身の回り品その他 
カバン 
時計・腕時計時計が落下して破損
アクセサリー 
メガネ・コンタクトレンズメガネが本棚の下敷き
電話・携帯電話電話が落下して破損
カメラ・ビデオカメラ落下して破損
DVD・CD・レコード 
書籍・絵画本棚が転倒して破損
スポーツ・レジャー用品 
寝具・衣類ふとん・まくら・シーツ 
コート 
スーツ・礼服スーツが破損
ジャンバー・ブルゾン 
ズボン・スカートズボンが破損
Yシャツ・ブラウス 
ポロシャツ・Tシャツ・トレーナー 
和服・着物着物が破損
マフラー・ショール・ネクタイ・スカーフ 
ベルト・ハンカチ・靴下・手袋

損害認定の計算例

上記各グループの損害率割合は以下の計算式で行います

損害があった代表品目数 / 所有品目数 ×そのグル ープの標準価額構成割合
分類損害割合計算式損害割合
食器類1/2×5%2.5%
電気器具類6/10×20%12.0%
家具類3/9×10%3.4%
身の回り品その他5/10×35%17.5%
寝具・衣類3/10×30%9.0%
合計 44.4%

計算の結果、家財全体の損害割合は44.4%となり、2017年1月1日以降始期の地震保険の場合は「小半損」の認定を受けることになります。(2016年12月31日以前始期の地震保険では「半損」の認定)

地震保険の支払い方についてはこちらで詳しく説明しています。

家財(代表品目)の損傷の確認方法

各代表品目の損傷の有無については、実際に破損しているなど、物理的に被害が確認できる場合に「損傷あり」と判断しますが、それ以外にも「損傷あり」と認定される基準があります。

・分類損傷ありできる損傷形態
食器類破損・焼損・水濡れ・汚損
電気器具類転倒・落下・他物との衝突
焼損・水濡れ・汚損・ショート・
移動によるコンセント・コード破損
家具類破損・変形・焼損・水濡れ・汚損
身の回り品その他破損・変形・焼損・水濡れ・汚損
寝具・衣類破損・変形・焼損・水濡れ・汚損・ガラスの混入

*破損は地震などにより生じた「転倒・落下・他物との衝突」が原因の損傷が対象であり、日常的な使用により生じたキズなどは対象になりません。

まとめ

地震が発生して、家財に損害を被った場合、地震保険に保険金を請求することになりますが、食器の一部や電気器具類の一部が破損しただけなので、地震保険の対象にならないと判断する人が居ます。

地震保険の損害認定の特殊性から、一部損以上の認定を受ける可能性がありますので、少しでも被害が発生した場合は、迷わず保険会社に事故の連絡をするべきです。

また、家の中がメチャクチャになってしまった人と、家財の代表品目がバランスよく破損した人が同じ「小半損や半損」に認定される場合があります。

これは、地震保険の家財の損害認定方法の特殊性から発生する事象であり、大規模地震が発生すると、必ず起きる現象です。

地震による家財の補償は、地震保険に加入していてはじめて受けられるものなので、地震保険は家財にもしっかり加入ておきましょう。

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3 件のコメント

  • はじめまして。福島県の者です。
    当サイトの御活動に敬意と御礼を申し上げます。恐れ入りますが質問に御回答頂ければ幸いです。

    今般、地震保険を請求するのにあたり生活動産損害構成割合を調べておりまして、
    東京海上への問い合わせで、今年の1月1日改定と言う最新の構成割合は聞き出せたのですが(貴サイトのとおり)
    私の契約は令和2年の6月なので契時期によって適用する数字が違うかも知れないとのことでした。
    さらに地震保険請求支払担当者からも連絡があったのですが適用される数字は教えてくれませんでした。
    この点につきましてご存知ではありませんでしょうか。

    さらにこの担当者は、あまりこの割合の数字にはこだわらずに、
    該当品目がなくても類似品でも申告したり、写真がなければレシートで申告するなど、
    損害の大きさが感じられるように申告してくれたほうが保険会社の裁量で判断できるような事を言われました。
    てっきり数字の積算で損害をわかりやすく被災者が納得できるように算出するための構成割合かと思っていたのですが、
    このように保険会社の裁量で結果が変わってしまうのは事実でしょうか。

    恐れ入りますが御回答頂けますと幸いです。宜しくお願い申し上げます。

  • ご質問有難うございます。
    福島県在住とのことで、2月13日の福島県沖の地震による被害と推測致します。
    地震保険の生活用動産(家財)の支払い認定は、2019年1月に改定され、それ以降の地震被害に適用されています。
    地震保険の家財の損害認定は、「食器類・電気器具類・家具類・身の回り品その他・寝具衣類」の5種類の代表品目の
    損傷割合で算出されます。
    代表品目以外の家財が損傷していても、家財の認定には認められません。
    地震保険は国が運営している保険であり、保険会社はできるだけ契約者(被災者)が保険金を受け取れるよう代表品目に
    損傷がないか調べますので、そのための質問と思われます。(自動車保険や火災保険とは異なり、より多くの被災者に
    保険金を払いたいのです)

    事故処理担当者は決められたスコアリングシートで、代表品目の損傷割合から全体の損害割合を算出しますので、沢山被害が
    あった方がより高い認定ができるのです。(スコアリングシートの結果により支払額が決まります)

    私がもし被災者で地震保険の家財の保険金を請求するのであれば、各代表品目に被害がないかしつこく調べます。(できれば
    各代表品目にまんべんなく被害があればベスト)

    損害割合による保険金の支払い割合は以下のとおりです。
    ・スコアリングによる損害割合10%未満     支払いなし
    ・   〃         10%以上30%未満 保険金額の5%
    ・   〃         30%以上60%未満   〃  30%
    ・   〃         60%以上80%未満   〃  60%
    ・   〃         80%以上       〃  100%

    以上ご質問に回答させていただきます。

  • ここで勉強させて頂き先ごろ地震保険の請求をすることが出来ました。有難うございました。
    想像していたより評価が厳しく、少々残念な結果でした。
    私は家具の被害が多かったんですが、当サイトでは家財の標準価格構成割合で家具類は10%とありますが、
    他のサイトで見ると改定前(?)の昔は20%というのがありました。
    なぜ家具は10%になってしまったんでしょうか。

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