自動車保険(対人賠償と対物賠償)が使える場合と使えない場合とは

交通事故の豆知識
真由美さん
先日車のルーフキャリアから荷物が落ちて、後ろを走っていた車にぶつかったんですが、自動車保険は使えるんですか?
元支社長
安心してください。 自動車保険使えますよ。

自動車保険が使える事故と使えない事故

自動車保険の対人賠償責任保険と対物賠償責任保険は、車の「所有・使用・管理」が原因の事故により発生した賠償責任について、請求することができます。

積み荷を落下させた場合の事故

高速道路を走っていたら、車の積み荷が落下して、すぐ後ろを走っていた車にその積み荷が当り、それが原因でガードレールに衝突した事故。

走行中の積み荷の落下は、基本的に車の「所有・使用・管理」が原因なので、その積み荷の落下に伴う後続車の事故は、積み荷を落とした車の運転手の責任であり、加入している自動車保険の支払い対象になります。

また、落下した積み荷が後続車に当たらなくても、落下した積み荷を避けようとして、後続車がガードレールに衝突しても支払い対象になります。

積み荷の落下については、落下後ある程度時間が経過していた場合でも、夜間などでその積み荷を発見できずに衝突した車があれば、賠償責任が発生する場合がありますので、積み荷が落下したことに気が付いた時は、すぐにその積み荷を撤去する必要があります。

あまり起きない事故ですが、車のルーフキャリアから荷物を降ろしている時に、荷物を落としてしまい、通行人や隣に駐車している車にぶつけて、損害を与えてしまった場合などは、自動車保険の対象にはなりません。

荷物を降ろす作業や荷物を積み込む作業は、車の「所有・使用・管理」に該当せず、荷物の積み込みや積み下ろし危険になり、自動車保険の対象にはなりません。

しかしながら、特約で「個人賠償責任特約」に加入していれば、業務上の作業でなければ、支払い対象になります。
その場合、自動車保険に請求しても、「ノーカウント事故」であり、翌年保険料は高くなりません。

真由美さん
えー そうなんですかー 知りませんでした。 でも積み荷はしっかり固定しなきゃね(-_-メ)
元支社長
それでは、いろいろな事故の例で解説しましょう

駐車場でドアが強風で開き隣の車にぶつかった事故

よくあることですが、風邪が強い日に、ドアを開けようとしたら、急にドアが風で開き、隣に駐車していた車や人にぶつかり、損害を与えた場合は、対物賠償責任保険や対人賠償責任の支払い対象になります。

ドアを開けるという行為は、車の「所有・使用・管理」における一連の作業の一部であり、その結果他人の車や身体に損害を与えた場合、賠償責任が発生しますので、自動車保険の対象になります。

ただし、その強風が、「想像を絶するような強風」や地震が原因の事故であれば、「不可抗力」の事故であり、加害者として賠償責任は発生しませんので、自動車保険の対象にはなりません。

走行中に石を跳ね飛ばした場合

砂利道や石が転がっている道を走行中に、石を跳ね飛ばして、後続車などに当たってしまって、後続車に傷をつけたり、フロントガラスを割ってしまった場合などは、意外に自動車保険が使えません。

対人賠償責任保険や対物賠償責任保険は、支払い要件に「法律上の賠償責任が発生した場合」という条件があり、それ条件を満たさないのです。

その理由は、通常ドライバーが路上の石を回避しながら運転することは不可能であり、仮に路上の石を跳ね飛ばしてしまったとしても、いわゆる「不可抗力」であり、民法上の不法行為の要件(故意・過失)を満たさないために、ドライバーに法律上の賠償責任が発生しません。

そのため、被害を受けた後続車は、自分が加入している自動車保険の車両保険で修理するしか方法がありません。(飛び石による車両保険請求は1等級ダウン事故です)

但し、ダンプカーなどが積んでいる石が、振動などで落下して後続車に当たった場合などは、ダンプカーのドライバーに賠償責任が発生するため、ダンプカーが加入している自動車保険が有効になりますので、被害を受けたら追いかけて請求しましょう。

車に付いている装置による事故

家庭用の車では、あまりない事故ですが、車が走行していなくても、その装置による事故は車の「所有・使用・管理」の事故として自動車保険の対象になります。

例えば、クレーン装置付きの車(ユニックなど)が車を駐車して、そのクレーン装置だけを使って作業をしているときに、そのクレーン装置を誤って操作をした結果、電柱にぶつかったり、駐車している他の車を壊した場合には、その車についている自動車保険が使えます。

やりがちな事故ですが、クレーン装置を操作中に電線を引っかけて、周辺を停電にしてしまった場合などは、電柱や電線の修理費などは、直接の損害として支払い対象になりますが、停電の影響で周辺のお店が休業してしまった「休業損害」は支払い対象になりません。

不法行為の加害者は、その不法行為によって直接発生した損害を賠償すればよく、その事故による波及損害は加害者に「予見可能性」がない限り損害賠償責任が発生しないためです。

牽引しているトレーラーによる事故

よく水上バイクやスノーモービルなどを載せたトレーラーを牽引(引っ張っている)している車を見かけますが、トレーラーを牽引しているときにはあまり事故は起こしませんが、バックの時にトレーラーをぶつける事故が発生します。

この場合、トレーラーは引っ張っている車についている装置ではありませんが、トレーラーでぶつけた物(車など)や人の損害は、牽引している車の自動車保険が使えます。

ただし、トレーラー自体の損害は、トレーラーに車両保険が付けられていないと自動車保険の対象にはなりません。

車を盗まれて事故を起こされた場合

車を盗まれた後に事故があった場合は、基本的に自動車保険は使えません。
自動車保険は、保険を使える人(被保険者)の範囲が決まっていて、無断で運転していた人はその車にかかっている自動車保険が使えないのです。

しかしながら、一定の条件を満たせば、車の所有者に賠償責任が問われることがありますので、その場合は自動車保険が使えます。

一定の条件とは

①車の管理状況
場所:路上などの第三者が自由に立ち入ることができる場所
状況:キーをつけっぱなしでドアに鍵がかかっていない状態

②盗難・事故内容
事故発生時間等:盗難されてからおおむね3時間から4時間程度

この場合、盗難されてもその管理状況によっては、車の所有者に事故の被害者から損害賠償請求される可能性がある(言い換えれば、車を盗難された人にも事故の責任があると判断される)と言えます。

まとめ

自動車保険の対人賠償責任保険と対物賠償責任保険は、車を走行中の事故だけでなく、車の「所有・使用・管理」が原因の事故が対象になります。
基本的に、走行中だけでなく、駐車中のその車についている装置が原因の事故も自動車保険の対象になります。

自動車保険に詳しくない人は、頭から自動車保険の対象にならないと思い、保険金を請求しない場合が多いですが、意外な事故が自動車保険の支払い対象になる場合があります。

自動車に関係する事故があった場合は、加入している代理店や保険会社に照会してみることをおすすめします。

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