欧米ではテレマティクス技術を活用し、安全運転度合いに応じ保険料を割り引く自動車保険が普及していますが、日本でも、中央省庁においてテレマティクス技術を活用した自動車保険を通じた交通事故低減がテーマとして掲げられ、自動車メーカーやIT企業による技術開発競争が活発化しています。
そのテレマティクス技術を取り入れて、国内の損害保険会社でも新しい自動車保険が発売されてきていますが、果たして、本当の意味の「テレマテクス自動車保険」なのでしょうか。
現在国内で発売されているまたは発売予定のテレマテクス自動車保険5社の比較をしてみたいと思います。
目次
東京海上日動の「ドライブエージェントパーソナル」
東京海上日動社は2017年4月から自動車保険の「トータルアシスト」に特約として加入できるテレマティクス技術を活用した「ドライブエージェントパーソナル」を発売しました。
特約の正式名称は「事故発生の通知等に関する特約」であり、専用のドライブレコーダー機能付きの機器を車に搭載することにより、事故の衝撃を自動的に感知して、事故の通知を自動的に行ってくれるサービスです。
トータルアシスト自動車保険の「ドライブエージェントパーソナル」に加入すると、専用の通信機能付きドライブレコーダーが提供され、運転中に事故の衝撃を感知すると、自動的に事故通知がされて、その場で事故の担当者と会話ができるサービスです。
また、状況に応じて警備会社から消防などに通知も可能です。
「ドライブエージェントパーソナル」サービスの特徴
運転中の安全運転支援アラート機能
- 前方車接近警告
- 片寄り運転警告
- 急加速・急ブレーキ警告
- ハンドリング警告
- 事故多発地点接近警告
- 気象情報
ドライブレコーダー機能
- 約4時間の録画が可能
- ドライブレコーダーが事故の衝撃を感知すると、自動的に事故の瞬間の画像が事故処理部門に転送される
ドライブレコーダーの性能
- 前方の映像をフルHD(約200万画素)の高画質で常時録画を行い保存する
- ドライブレコーダーに装着済のmicroSDカード(32GB)で、約4時間の録画が可能(自動で上書きされる)。
運転診断レポートサービス
契約している車の運転を点数化して、同年代の平均と比較できたり、急ブレーキ・急ハンドル・急アクセルの発生頻度、強さをそれぞれ詳細に分析して、アドバイスをしてくれる。
特約の保険料
毎月650円
専用機器設置に必要な環境
電源供給のためのシガーソケットなど
安全運転診断結果による保険料割引
なし
損害保険ジャパン日本興亜の「ドライビング!」
損害保険ジャパン日本興亜は2018年1月から「THEクルマの保険」に、特約として加入できるテレマティクス技術を活用した「ドライビング!」発売します。
これは東京海上日動の「ドライブエージェントパーソナル」と同様に、「THEクルマの保険」に特約として加入すると、専用のドライブレコーダー機能付きの機器を車に搭載することで、事故の衝撃を自動的に感知して、事故の通知を行ってくれるサービスです。
特約の正式名称は「ドライブレコーダーによる事故発生時の通知等に関する特約」であり、事故発生時の事故通知が主な機能になります。
損保ジャパン日本興亜の自動車保険「THEクルマの保険」の特約「ドライビング!」に加入すると、専用の通信機能付きドライブレコーダーが提供され、運転中に事故の衝撃を感知すると、自動的に事故通知がされる。同時にショートメールで事故受付の連絡がされたり、ワンプッシュで連絡が可能。(手動連絡も可)
また、警部会社ALSOKの現場急行サービスで事故の対応をしてくれる。
「ドライビング!」サービスの特徴
運転中の安全運転支援アラート機能
- 前方車接近警告
- 急加速・急ブレーキ警告
- ハンドリング警告
- 気象情報
ドライブレコーダー機能
- 約10時間の録画が可能
- ドライブレコーダーが事故の衝撃を感知すると、自動的に事故の瞬間の画像が事故処理部門に転送される
ドライブレコーダーの性能
- ドライブレコーダーに装着済のmicroSDカードで、約10時間の録画が可能(自動で上書きされる)
- ドライブレコーダーに付属されているSDカードから、自宅のパソコンなどで、走行映像を確認することができる。映像以外にも、詳細な走行データまで確認できる。
運転診断レポートサービス
ドライバーの運転のクセを可視化した「運転診断レポートRodeco(ロデコ)」を自宅のパソコンやスマートフォンで確認でき、専用のドライバーズページからいつでもチェックできる。
警備会社ALSOKの現場急行サービス
事故に遭うと現場ではどうしても不安になりますが、「ドライビング!」に加入していれば、必要に応じて警備会社ALSOKの警備員が現場に駆けつけてくれて、サポートしてくれます。
特約の保険料
毎月850円
専用機器設置に必要な環境
- 電源供給のためのシガーソケットなど
- スマートフォンまたは携帯電話(ガラケー)を所有していて、インターネット接続ができること(ガラケーの場合は事故の自動通報とALSOKの現場急行サービスの機能に限定されます)
- ショートメール機能があること
- GPS機能があること(ALSOKの現場急行サービスに必要)
安全運転診断結果による保険料割引
なし
三井住友海上のの「GK見守るクルマの保険」
三井住友海上は2018年1月から「GK見守るクルマの保険」をテレマティクス技術を活用した新しい自動車保険として発売します。
これは東京海上日動の「ドライブエージェントパーソナル」や損保ジャパン日本興亜の「ドライビング!」と同様に、三井住友海上の主力自動車保険である「GKクルマの保険」に「事故発生の通知等に関する特約」を付けた自動車保険です。
「GK見守るクルマの保険」は、ドライブレコーダー機能のない専用の機器と、専用アプリをご利用いただくことによって「安全運転をサポートし、見守るご家族等にも安心をご提供する」サービスです。
三井住友海上の自動車保険「GKクルマの保険」の「事故発生の通知等に関する特約」に加入すると、専用の通信機能)ドライブレコーダー機能なし)が送られてきて、スマホに専用アプリを入れることで、3つのサービス(事故防止支援サービス、事故の自動通知サービス、安全運転診断サービス)が提供されます。
「GK見守るクルマの保険」サービスの特徴
運転中の安全運転支援アラート機能
- 高速道路逆走注意
- 指定区域外走行
- 急加速・急ブレーキ警告
- ハンドリング警告
- ふらつき運転
- 走行時間
- 事故多発地点接近警告
- 交通標識地点走行
- 気象情報
- 動物注意
ドライブレコーダー機能
ドライブレコーダー機能はありません。
運転診断レポートサービス
契約している車を運転するドライバー単位で1回の運転ごとの走行データをもとに運転傾向を評価する「運転レポート」および1か月の運転レポートを総合的に分析した「月間運転レポート」が提供されます。
月間運転レポートの内容は、急ブレーキ・急ハンドル・急アクセルの発生頻度、強さをそれぞれ詳細に分析して点数化され、アドバイスをしてくれます。
特約の保険料
毎月300円
専用機器設置に必要な環境
- 電源供給のためのシガーソケットなど
- スマートフォン
- Bluetooth 機能
- GPS機能
安全運転診断結果による保険料割引
なし
*三井住友海上と同じMS&ADグループの、あいおいニッセイ同和からも同様のサービスが提供される「タフ見守るクルマの保険」が発売される予定です。
あいおいニッセイ同和と三井住友海上は2019年1月からドライブレコーダー付き自動車保険を発売します。
セゾン自動車火災「おとなの自動車保険」の「つながるボタン」と「つながるアプリ」
おとなの自動車保険では、2017年7月から、テレマティクス技術を活用した「つながるボタン」と「つながるアプリ」を提供しています。
「おとなの自動車保険」は車に設置する専用機器(ボタン)からスマートフォンを経由して運転データーを送信して、安全運転診断や事故の衝撃を感知しての事故通知、ALSOKの現場急行サービスが提供されます。
「つながるボタン」「つながるアプリ」サービスの特徴
運転中の安全運転支援アラート機能
運転中の安全運転アラート機能はありません。
ドライブレコーダー機能
ドライブレコーダー機能はありません。
運転診断レポートサービス
運転が終了するとスマホに安全運転診断レポートが送信されます。
主なレポートの内容は
- ブレーキ、アクセル、ハンドル操作などの安全運転度が点数化されて通知される
- 燃費などのエコドライブ診断
- 急ブレーキや急ハンドル、急加速などの回数を通知して危険度を知らせる
- その日運転した走行マップが提供される
特約の保険料
なし
専用機器設置に必要な環境
- スマートフォン
- Bluetooth 機能
- GPS機能
安全運転診断結果による保険料割引
なし
*おとなの自動車保険で提供される「つながるボタン」は電池で駆動するため、電池切れの際は、交換が必要です。
参考:おとなの自動車保険の「つながるボタン」「つながるアプリ」
あいおいニッセイ同和の「タフ・つながるクルマの保険」
あいおいニッセイ同和は2017年11月8日ニュースリリースを行い、トヨタ自動車と提携して、トヨタのコネクテットカー専門のテレマテクス自動車保険「タフ・つながるクルマの保険」を2017年4月から発売すると発表しました。
この「タフ・つながるクルマの保険」はトヨタのコネクテットカーから得られる走行距離や運転特性(速度超過や急ブレーキ、急加速など)から保険料を最大20%割り引くというもので、テレマティクス自動車保険としては、初めて運転診断の結果を保険料の割引に反映させるものです。
対象車種はトヨタのクラウン(2018年夏以降販売)やレクサス(2018年1月以降販売の一部)であり、順次対象車種を拡大していくとしています。
コネクテットカーとは
コネクテッドカーとは、ICT端末としての機能を有する自動車のことであり、車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。
総務省のHPから引用
まとめ
テレマティクス自動車保険は、日本でようやく発売されるようになりますが、事故時の自動通報や、安全運転診断機能に限定されていて、安全運転診断の結果が自動車保険の保険料の割引に使われるまでは進んでいません。
唯一あいおいニッセイ同和の「タフ・つながるクルマの保険」だけが自動車保険の保険料割引に使われますが、対応している車がまだまだ限定的です。
欧米のテレマティクス自動車保険の流れに追いつくには、もう少し時間がかかりそうですが、テレマティクス技術により、安全運転が励行されて、交通事故の減少につながり、結果的に自動車保険の保険料が安くなることは歓迎したいですね。
今発売されている大手損害保険会社のテレマティクス自動車保険は、まだまだ開発途上ですが、東京海上日動の「ドライブエージェントパーソナル」や損保ジャパン日本興亜の「ドライビング!」はドライブレコーダーが提供されて、交通事故の証拠としても使えるので、試してみる価値はありそうです。