交通事故を起こした場合の3つの責任
交通事故は常に被害者になるとは限りませんし、かなりの確率で加害者になることがあります。
人身事故で加害者になると、精神的にも経済的にも大きなダメージがありますが、なんとかそれを軽くしたいものですよね。
例えば、交差点の事故で、
*ソニー損保HPから引用
その他の過失割合はこちら
直新車のAと右折車のBが交差点内で接触事故を起こした場合、基本的な過失割合は
直新車A:20%
右折車B:80%
になります。
この場合は
右折車B;加害者
直新車A:被害者
になります。
人身事故を起こして、自分が加害者になった場合は、以下の3つの責任があります。
・刑事上の責任
自動車運転死傷行為処罰法違反やその他の道路交通法違反による罰金や禁錮、懲役など
・行政上の責任
行政処分として、運転免許証の取り消しや停止、減点、反則金などが行われます。
・民事上の責任
被害者に対して、治療費や慰謝料・休業損などの損害賠償をする責任
刑事上の責任とは
過失により交通事故を起こし、人を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪(刑法211条)に問われ、責任の度合いによって処罰されますが、多くは「罰金」を払うことになります。。
交通反則金と罰金の違い
反則金とは交通反則通告制度に基づいた行政処分として課せられる過料のことで、駐車違反や携帯電話使用など比較的軽い交通違反で、交通反則告知書(俗にいう青キップ)が発行された場合です。
この場合は反則金を支払うことで刑事手続きが免除され、前科がつくこともありません。
罰金とは、刑事処分として科せられる過料のことで、人身事故を起こした場合は、反則金よりもより重い交通違反で、俗に「赤キップ」と呼ばれる書面が発行されます。
この場合は検察庁などへ任意出頭が通知され、通常の刑事事件として刑事処分の対象となります。
人身事故の加害者になった場合は、刑事上の責任があり、罰金を科されたり、重ければ交通刑務所に行かされます。
罰金はいわゆる「罰金刑」になりますので、厳密にいえば「前科」がつくことになりますが、罰金だけの道路交通法上の前科は履歴書などに記載する必要はありません。
事故後のお見舞いの重要性
人身事故を起こして加害者になりますと、その相手のケガの程度によりますが、警察官から取り調べを受け、事故状況などを詳しく聞かれます。
その後その調書が検察庁に送られますが、検察官はさらに事情を聴くために、加害者を呼び出し、事故の詳しい内容について聴取することになります。
検察官は被害者の感情を重視する傾向にあり、この時すでに被害者との間で示談が成立していたり、被害者から寛大な処置を希望する書面などがあれば、不起訴の可能性もありますが、逆に被害者が加害者の処罰を重くして欲しいなどと検察官に訴えていたりすると、重くなります。
損害保険会社が被害者とケガ等に対する賠償額などの交渉する時に、結構言われるのは、『事故の加害者のくせに、一度も謝罪に来ない』のような不満です。
損害保険会社の事故担当者は、加害者(被契約者)に対して、お見舞いの必要性をお話しするのですが、なかなか行こうとしない人が多いのです。
結局、被害者との示談交渉が長引く結果になり、検察官の心証を悪くして、重い罰金刑や行政処分に処されることになります。
損害保険会社は、被害者との賠償金に関する交渉はしますが、刑事罰や行政処分については、一切口を出す立場ではないので、契約者(加害者)の処分を考慮しての交渉はしません。
人身事故の加害者になってしまった場合は、全てを損害保険会社まかせにせず、必ず事故の当日か翌日には、菓子折りを持って謝罪に行くべきです。
近くに損害保険会社の事故処理拠点があれば、人身担当者に同行してもらうのも有効です。
但し、加害者と被害者の過失割合が近い場合は、ケンカになる恐れもあるので、事前に事故の人身担当と相談をしてからにしましょう。
また、事故の当事者双方に過失があり、加害者と被害者両方が負傷した場合は両方が刑事罰の対象になります。
自分は被害者だからといって安心はできませんが、比較的過失割合の低い方は、起訴猶予になることが多いので、罰金は科されずに、行政処分だけの場合もあります。
主な刑事処分の例
被害者のケガの程度 | 被害者の過失 | 刑事処分の内容 |
全治3か月以上の重症 | 被害者過失なし | 懲役刑または禁錮刑 または罰金30万~50万 |
被害者過失有り | ||
全治30日以上3か月未満 | 被害者過失なし | 罰金30万~50万 |
被害者過失有り | 罰金20万~50万 | |
全治15日以上30日未満 | 被害者過失なし | 罰金15万~30万 |
被害者過失有り | ||
全治15日未満 | 被害者過失なし | 罰金12万~20万 |
被害者過失有り |
なんと人身事故の罰金は最低12万円です。
行政上の責任とは
行政上の責任には、運転免許証の違反点数や反則金などがありますが、運転免許証の点数は、減点方式ではなく、違反をするごとに加点されていく累積方式が採用されています。
ケガなどを伴わない物損事故の場合は、警察に届け出をしても点数の加算はありません。
但し、当て逃げなどの場合は「安全運転義務違反」の2点と「危険防止処置義務違反」の5点が加算されます。
人身事故の点数一覧
安全運転義務違反 2点に以下の点数が加算されます。
被害者の損害 | 被害者の過失 | 加算点数 | 免停・取消 |
死亡 | 過失なし | 20点 | 免許取消 |
過失有り | 13点 | 免許停止90日~ | |
全治3か月以上 後遺障害あり | 過失なし | 13点 | 免許停止90日~ |
過失有り | 9点 | 免許停止60日~ | |
全治30日以上 3か月未満 | 過失なし | 9点 | 免許停止60日~ |
過失有り | 6点 | 免許停止30日 | |
全治15日以上 30日未満 | 過失なし | 6点 | 免許停止30日 |
過失有り | 4点 | 免許停止30日 | |
全治15日未満 | 過失なし | 3点 | |
過失有り | 2点 |
ひき逃げの場合は更に+35点になります。
既に他の違反で累積点数がある場合は、累積点数で以下の処分になります。
(免停の前歴なしの場合)
免許停止 | 免許取消 | |||
累積点数 | 6点~8点 | 9点~11点 | 12点~14点 | 15点~ |
免許日数 | 30日 | 60日 | 90日 | 免許取消 |
民事上の責任
被害者に対する民事上の損害賠償責任のことで、自賠責保険・自動車保険はこの損害を支払うものです。
交通事故を起こして他人に損害を与えたときは、民法709条の不法行為責任や自動車損害賠償保障法に基づき、被害者が受けた痛手をお金に換算して支払うことで解決します。
被害者のケガの場合は治療費や慰謝料、休業損害などがあり、死亡・後遺障害などの場合は、葬儀費や被害者が事故にあわなかったら得られたであろう収入(逸失利益)、慰謝料などがあります。
この損害賠償に関する被害者との交渉は、自動車保険(任意保険)に加入していれば保険会社が、示談交渉にあたってくれます。(示談代行サービス)
自動車保険や自賠責保険はこの「民事上の責任」のために加入しているのです。
まとめ
人身事故は、物損事故とは違い、罰金や免許証の点数(免許停止や免許取消など)を伴い、経済的にも精神的にも非常にダメージを受ける重大事件です。
誰も人身事故を起こしたくて起こすわけではありませんが、起こしてしまった以上は、なんとかその事故によるダメージを少なくする努力が必要です。
被害者への賠償(民事上の責任)は自動車保険に加入していれば全額補償されますが、刑事上の責任と行政上の責任は、自らその責任を軽くする努力が必要です。
事故の現場で相手(被害者)とケンカをしたり、事故の後、全てを保険会社任せにして、謝罪(お見舞い)に行かないことは、結果的に重い罰金刑や行政処分(免許の点数)などが科されることになりますので、絶対避けたいものです。
損害保険会社の事故処理担当者は、そのへんの相談にも応じてくれますので、遠慮なく相談をしてください。