自動車保険で同僚災害が払われる場合と払われない場合とは

交通事故の豆知識
真由美さん
先週主人が会社の敷地内で同僚の車と接触事故を起こして、同僚がケガをしたの。 自動車保険は使えるの?
元支社長
いわゆる同僚災害は、その事故のパターンで自動車保険の対象になる場合とならない場合があるのです。いくつかのパターンで説明します。

自動車保険の同僚災害で払える場合と払えない場合

同じ会社の従業員同志の業務中の事故を「同僚災害」と言って、その事故のパターンによって、対人賠償責任保険で払える場合と払えない場合とがあります。

基本的に会社所有の車で事故を起こし、その従業員が、お互い「業務に従事中」であれば対人賠償責任保険の支払い対象にはなりません。

業務中や通勤途中の事故であれば、労災保険が適用されますので、ケガの治療費や休業損害及び後遺障害の補償は労災保険から支給されます。

ただし、対人賠償責任保険と異なり、労災保険には「慰謝料」の支払いがありませんので、もし会社が加入している自動車保険に「人身傷害保険」が付いていれば、慰謝料だけを会社が加入している自動車保険に請求できます。
また、休業損害など、人身傷害保険の方が支払う額が多い場合、労災保険との差額を人身傷害保険に請求することができます。

帰宅中の他の従業員を負傷させた場合

事故例
従業員Aが会社の車で帰社してきたところ、会社の敷地内で帰宅しようとしていた従業員Bにぶつかり、従業員Bが負傷した。

解説
従業員Bが事故に遭った場所が会社の敷地内の場合、たとえ帰宅途中でも「会社の管理下」とみなされ、会社の車の対人賠償責任保険は使えませんが、会社の敷地を出た場所での事故は支払い対象になります。

労災保険で通勤災害になる通勤の範囲は、「住居と就業場所との間」で、「住居」と「就業場所」それぞれの「門」をもってその境とされています。

具体的には、「住居」の場合は家の門(門がなければ、敷地の境界線であり、アパートなどの場合は玄関ドア)を出た時点からが通勤の開始になり、自分が仕事をしている会社の建物の中、または、会社の敷地内に入った時点で通勤が終了することになります。

会社の車で帰宅中の事故

事故例
会社所有の車で帰宅中に、従業員Aが運転していて、自爆事故を起こし、同乗していた従業員Bが負傷した。

解説
自動車保険の対人賠償責任保険は業務中の従業員同士の事故は、保険金支払いの対象になりませんが、「通勤中」は業務中にはなりません。

しかしながら。今回の事故例では、会社所有の車での事故であり、この場合は、通勤中や立ち寄り先に向かう途中などでも、「業務中」ともなされ、対人賠償責任保険の支払い対象になりません。(会社所有のマイクロバスなどでの送迎もこれにあたります)

従業員のマイカーでの業務中に起きた事故

事故例
従業員がマイカーで出勤中、または立ち寄り先で仕事を終え、会社に戻る途中で事故を起こし、同乗していた同僚がケガをした場合の事故。

解説
従業員のマイカーでの事故は、業務で使用する場合「業務中の事故」になりますが、マイカーが加入している自動車保険を個人で加入していれば、「同僚災害担保特約」が標準で付いていますので、対人賠償責任特約の支払い対象になります。

この「同僚災害担保特約」は「記名被保険者」が個人の場合に限り、自動的に適用されますので、注意が必要です。

出張中の同僚災害

事故例
会社所有の車で出張に出かけ、出張先に向かう途中で事故を起こし、同乗していた同僚がケガをした事故

解説
出張中では、出発してから会社に帰るまでが全て業務上の事故として取り扱われますので、対人賠償責任保険の支払い対象にはなりません。

ただし、出張先で仕事が終わり、空いた時間で私的に観光をした場合などは業務中にはなりませんので、対人賠償責任保険の支払い対象になります。

出向社員の扱い

事故例
在籍出向社員のAさんが出向先が所有している車で、出向先の従業員Bさんを乗せて運転中に事故を起こし、出向先の従業員Bさんを負傷させた。

解説
出向社員には、元の会社と雇用関係を保ったまま出向する「在籍出向」と、元の会社と雇用関係を解消して、出向先の会社に転籍する「移籍出向(転籍)」の2種類あります。

在籍出向社員は、出向先の会社とは直接の雇用関係がありませんので、同僚災害とはみなされず、対人賠償責任保険の支払い対象になります。

対人賠償責任保険の使用者と使用人の関係は、直接の雇用関係にある場合に限定していますので、在籍出向社員と従業員の事故は同僚災害にはなりません。

ただし、在籍出向社員ではなく、移籍出向社員の場合は、会社との直接雇用関係がありますので、同僚災害とみなされ、対人賠償責任保険の支払い対象になりません。

派遣社員の扱い

事故例
人材派遣会社から派遣されている運送会社のドライバーAさんが、派遣先の会社の従業員Bさんと運送業務中に事故が起き、派遣先従業員のBさんがケガをした。

解説
人材派遣会社から派遣されている人は、委託契約であり、報酬は派遣会社が支払っているため、派遣先の運送会社と直接な雇用関係はなく、同僚災害にはなりません。

まとめ

自動車保険の「対人賠償責任保険」には業務中の同僚災害は「免責」と規定されています。

これは、一般的に業務中の事故による同僚災害は、自動車保険ではなく、自賠責保険と労災保険で対応することが判例(横浜地裁川崎支部 昭和55年2月14日判決)で示されているためであり、全ての自動車保険共通のものです。

これはあくまで「会社所有の車」での事故が対象であり、従業員個人のマイカーを持ち込んで業務に使用する場合は、その車が加入している自動車保険の記名被保険者が「個人」である場合に限り、対人賠償責任保険は支払い対象になります。

会社所有の車で同僚災害が発生した場合は、自動車保険の対人賠償責任保険は、支払い対象になりませんが、人身傷害保険は支払い対象になりますので、自賠責保険や労災保険では支払われない「慰謝料」や休業損害などの差額を人身傷害保険に請求することは可能です。

人身傷害保険では自賠責保険や労災保険から支払われた保険金は、支払い対象から控除されますので、慰謝料や休業損害などの差額のみの支払いになります。

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