2018年5月18日午後6時ごろ、埼玉県さいたま市のコンビニ駐車場で、駐車場内を歩いていた、鈴木ひろ子さん(73)が乗用車にはねられた。
鈴木さんは頭を強く打ち、搬送先の病院で死亡。大宮西署は自動車運転過失致死の疑いで、乗用車を運転していた上尾市小泉、板金工の男(27)を調べている。
同署によると、男は前向きに駐車した乗用車を後退させる際、後ろを歩いていた女性に気付がつかなかったのが事故の原因であるとのこと。
後を絶たない交通事故死ですが、加害者の男はこの事故でどのような罰を受けて、いくらの賠償金を払うことのなるのでしょうか。
目次
死亡事故で問われる刑事罰
交通死亡事故で問われる刑事罰には、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪があります。
過失運転致死傷罪は、自動車や原付バイクを運転する際に必要な注意を怠って、人を死傷させた場合に適用されるもので、2007年に新設された比較的新しい法律です。(以前は自動車運転過失致死傷罪)
自動車運転過失致死傷罪:7年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰金
危険運転致死傷罪は、飲酒運転などの死亡事故が多発したことにより、飲酒運転や著しい高速運転など、基本的な交通ルールを無視した無謀な運転による悪質・重大な死傷事犯について、故意犯である暴行による傷害、傷害致死に準じた犯罪として2001年6月に施行されました。
危険運転致死傷罪:人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役
埼玉県さいたま市のコンビニ駐車場で起きた死亡事故は、飲酒運転などではないため、過失運転致死傷罪に問われると思われます。
加害者はいくらの賠償金を請求されるのか
交通死亡事故の加害者は、刑事罰の他に、遺族から損害賠償請求されることになりますが、その金額はどのように計算されるのでしょうか。
一般的に死亡事故の損害賠償額は以下のような計算式で算出されます。
死亡による逸失利益とは
死亡による逸失利益とは、交通事故に遭って死亡しなければ将来得たであろう収入のことで、計算式は以下のとおりとなります。
長期的に発生する賠償金を前倒しで受けとる際に控除する指数で、将来の収入を前倒しで受け取る事から、年利5%の利息を控除して計算されます。
実際の年収がはっきりとわかっている場合は、実収入を使って計算しますが、家事従事者(主婦)や学生・生徒・幼児、無職者など、収入がない場合は(年齢別平均給与)賃金センサスの数字を使います。
また、一時的に収入が落ち込んでいる人や、自営業で確定申告を行っておらず実際の収入が明確にわからない人も、賃金センサスの使うことができます。
慰謝料の計算方法は
死亡慰謝料の算出は、被害者の立場と被扶養者の人数で決定されます。
- 一家の支柱 2,800万円
- 母親や配偶者 2,400万円
- その他 2,000万円~2200万円
葬儀費やその他の費用
一般的に葬儀費用として、花代、弔問客に提供する食事代、葬儀業者に支払った費用、お布施、読経、戒名料、火葬費用。墓石代、墓地費用など120万円~150万円くらいが認められます。
また、その他死亡に至るまでの医療費や臨時に支出された費用なども賠償金として請求されます。
実際の賠償金の例
実際の賠償金の例として、年齢40歳、一家の支柱で年収500万円、被扶養者2名(配偶者、子供一人)の方の場合の賠償金は以下のとおりとなります。
死亡よりも重度後遺障害が高額になる?
交通事故で被害者が死亡した場合は、死亡した被害者の逸失利益と慰謝料、葬儀費などの合計額が損害賠償金として請求されますが、過去の損害賠償金の高額ランキング30位を見ると、死亡事故は2件程度であり、ほとんどが後遺障害1級の後遺障害です。
これは、後遺障害1級から3級の認定を受けると、労働能力逸失率が100%となり、死亡と同等の逸失利益が請求されることと、後遺障害で一生介護が必要となれば、将来に渡っての介護費用や治療費が上乗せされるために、死亡した場合の倍額になることも珍しくありません。
大学3年生が乗用車ボンネットに伏臥乗車中に走行乗用車から転落負傷した事故で後遺障害1級1号に認定された事故は、被害額として認定された3億7829万円のうち、将来の介護・治療費は1億8163万円(平成23年2月 名古屋地裁)
33歳の会社員がバイクで乗用車と衝突して、後遺障害1級の1号に認定された事故で、損害賠償金3億6756万円が認定されたうち1億2789万円が将来の介護・治療費(平成17年5月 名古屋地裁)
後遺障害による労働能力逸失率とは
交通事故により後遺障害が残った場合は、その障害のために将来にわたって労働能力に影響が出る事が一般的であり、後遺障害のために得られなくなったことによる損害を「労働能力逸失率」といいます。
労働能力逸失率表
障害等級 | 労働能力逸失率 |
第1級 | 100/100 |
第2級 | 100/100 |
第3級 | 100/100 |
第4級 | 92/100 |
第5級 | 79/100 |
第6級 | 67/100 |
第7級 | 56/100 |
第8級 | 45/100 |
第9級 | 35/100 |
第10級 | 27/100 |
第11級 | 20/100 |
第12級 | 14/100 |
第13級 | 9/100 |
第14級 | 5/100 |
自動車損害賠償保障法施行令より
まとめ
交通事故による被害者への賠償金は、自動車保険に加入していれば、対人賠償保険に無制限で加入していれば、自賠責保険と合わせて、全額支払われることになりますが、死亡事故の加害者として、刑事罰を受けることにもなります。
自分には関係ないことと思いがちですが、誰にでも起こりえるのが交通事故であり、ドライバーの責任として、最低限自動車保険には必ず加入しておきたいものです。
また、自動車保険に加入していても、分割保険料が引き落としにならずに、契約が失効したまま事故を起こすなどの事件も多発していますので、自分が加入している自動車保険について、しっかり把握しておくことも必要です。