2018年4月9日札幌市の歩道で、コンビニから出た小学2年生の男児が右から走って来た自転車にはねられ、左足の骨を折る重傷を負ってしまいました。
男児をひいた自転車はそのまま現場から走り去ってしまいましたが、警察が防犯カメラに写った映像をもとに自転車の持ち主を特定して、札幌市の大学生の男性(20)が20日、道路交通法違反などの疑いで逮捕されました。
自転車は道交法で「軽車両」に分類される車の仲間で、事故を起こした運転者がけが人の救助をせず現場を去れば、道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われ、1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科される重罪です。
交通事故発生時の自転車の義務とは
たとえ自転車であっても、交通事故が発生した場合には、自動車と同様に、負傷者救護、警察への報告などの、次のような義務を負うことになります。
- 直ちに運転を停止すること。
- 負傷者を救護すること。
- 道路における危険防止措置を講じること。
- 警察官に交通事故の状況を報告すること。
- 警察官の指示により現場にとどまること。
これらの義務を怠れば、ひき逃げ、当て逃げ、負傷者救護義務違反などに問われることになります。
更に悪質な場合は「重過失傷害罪」に
自転車の事故で他人をケガさせた場合に、酒酔い運転や、スピードの出し過ぎなどの悪質な場合は、「重過失傷害罪」に問われることがあります。
重過失傷害罪とは
重過失致死傷罪は,単純過失のうち,とくに違法性の程度が大きく,責任が重い場合を類型化して法定刑を引き上げたものとされます。したがって,わずかな注意を払うことによって結果を予見でき(予見可能性),かつ,結果の発生を容易に回避することができるとき(回避可能性)に,重大な過失となります。
たとえば,赤信号を見落とし,自転車にけんけん乗りをして横断歩道上の歩行者の一団に突っ込み傷害を負わせた場合に,重過失と認められています(東京高判昭57・8・10)
重過失致傷害罪の刑事罰は5年以下の懲役、5年以下の禁固、50万円以下の罰金になります。
自転車事故で高額の損害賠償請求されることも
自転車事故でひき逃げをした場合、重い刑事罰を受けるほかに、被害者のケガや後遺障害などの程度に応じて、損害賠償請求をされる可能性があります。
特にひき逃げをして、被害者の救護を怠った時は、被害者感情もこじれていますので、裁判に発展する可能性が高く、かなりの確率で高額の損害賠償請求をされてしまいます。
自転車事故の事故現場では、被害者の救護を最優先して、丁寧な対応をすることが必要になります。
自転車のひき逃げで車の免許が免停になることもある?
自転車の事故と自動車の免許とは関係ないと思いがちですが、自転車でひき逃げをしたことにより、自動車の運転免許が「免許停止」になった事例があります。
高知市の路上を自転車で走行していた際、歩行者と衝突しけがを負わせたのに逃げたとして、高知県警は2日、同市前里のパート従業員の女性(47)を180日間の自動車の運転免許停止処分にした。
県警によると、自転車の交通事故で免許停止になるのは高知県では初めて。「運転者として適格性を欠き、車でも同じことをするかもしれないから」と説明している。20147年8月2日 産経ニュースから引用
道路交通法第103条1項8号には、『免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき』と規定されており、これに該当する場合には、免許取消処分や免許停止処分をすることができる」とされていますので、自転車でひき逃げや酒酔い運転など悪質な運転をした場合は、運転免許が免停になることもあります。
まとめ
自転車は手軽で便利な乗り物ですが、道路交通法上は「軽車両」に該当し、きちんとルールを守って運転する義務があります。
その割に乗っている人は、歩行者がいる歩道を平気で走ったり、交差点の一時停止を無視したりする人が大勢います。
自転車で事故を起こした場合は、車の事故と同様に被害者の救護や、加害者として損害賠償をする義務があることを認識するべきです。
ちょっとした不注意から「犯罪者」になったり、高額な賠償請求をされたりする可能性がありますので、しっかりとした心構えと、自転車事故に対応できる保険に加入しておきましょう。