2017年12月7日、電動自転車を運転していた女子大生(20)が歩行者(77)と出合い頭にぶつかり、歩行者は転倒し病院に運ばれましたが、2日後に死亡しました。
報道では、女子大生は、スマホを操作していただけでなく、ハンドルに添えた右手に飲料カップを持ち、左耳にイヤホンをしていたために、前方をよく見ていなかったために、女性に気が付くのが遅れ、衝突したようです。
事故を起こした女子大生は「重過失致死」で書類送検される見込みです。
横浜市鶴見区でも12日夜に自転車による死亡事故が発生しており、自転車と歩行者の衝突による死亡事故が多発しています。
それでは、自転車で死亡事故を起こした場合、賠償金はどうなるのでしょうか?
目次
自転車事故による賠償金はいくらになるのか
自転車を運転していて、歩行者と衝突し、相手を死亡させた場合は、当然被害者の遺族から賠償請求されることになりますが、一体いくら請求されるのでしょうか。
自転車事故と言えども、賠償金は自動車の事故と同じ扱いとなりますので、自動車保険で支払われる死亡事故の賠償金の額が参考になります。
年齢別の賠償額の目安(自動車保険の場合)
年齢 | 被害者の扶養家族 | 賠償金の目安 |
25歳 | 有り(1名) | 8,000万円 |
無し | 7,000万円 | |
35歳 | 有り(2名) | 8,000万円 |
無し | 6,000万円 | |
45歳 | 有り(2名) | 7,000万円 |
無し | 6,000万円 | |
55歳 | 有り(2名) | 6,000万円 |
無し | 5,000万円 | |
65歳 | 有り(1名) | 4,000万円 |
無し | 3,000万円 |
*被害者が死亡した場合の賠償金の額は、被害者の年収や家族構成、扶養者の有無(人数)により大きく変動しますので、上記の表は、あくまでも目安となります。
今回の被害者は77歳と高齢者ですが、裁判になれば自動車保険の支払い基準より高額になることがほとんどなので、3,000万円以上の賠償金が請求されると思われます。
過去の自転車事故の高額賠償例
賠償額:9,521万円
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。( 神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)賠償額:9,266万円
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決賠償額:6,779万円
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決)賠償額:5,438万円
男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決)賠償額:4,746万円
男性が昼間、赤信号を無視して交差点を直進し、青信号で横断歩道を歩行中の女性(75歳)に衝突。女性は脳挫傷等で5日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成26(2014)年1月28日判決)出典:一般財団法人日本損害保険協会ホームページ「自転車事故と保管」
自転車と歩行者の過失割合は?
今回の事故は、加害者である女子大生が遊歩道から市道に出ようとして、歩道を歩いている被害者に衝突していますので、過失割合は以下のとおりとなると思われます。
加害者の女子大生はスマホを見ながら走行しており、過失割合を修正されることなく、100%の責任割合になると思われます。
加害者の女子大生は高額の賠償金が支払えるのか
加害者である女子大生は未成年ではなく、20歳なので直接本人が賠償請求されることになりますが、3,000万円以上の高額賠償をすることができるのでしょうか?
高額賠償の判決を受けても、一括で支払う能力がない場合は、将来に向けて給料を差し押さえられたリ、長い年月をかけて分割で支払ったりする場合もあるようです。
自転車事故に備える保険に加入しているか
自転車事故が多発していることを受けて、最近では保険に加入している人も増えています。
TSマーク自転車保険
TSマークとは自転車安全整備店で点検・整備をした普通自転車に貼る保険が付いたシールで、この整備すると、その整備の内容に応じた自転車事故の保険が自動的に付いています。
青色TSマーク:賠償責任保険 1,000万円
赤色TSマーク:賠償責任保険 1億円
自転車保険
自転車保険は、以前大手損害保険会社全社が販売していましたが、盗難等の事故が多発して損害率が悪化したため、今は販売を停止していることが多く、現在加入できるのは、ダイレクト型かコンビニで加入する方法が一般的です。
賠償責任保険は加入するコースにより1億円から3億円まで補償してくれます。
個人賠償責任保険
日常生活上の賠償事故に幅広く対応できる特約で、自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険にもセットできる保険です。
割と一般的な特約なので、アパートや借家など賃貸住宅に住んでいる人は、仲介業者(不動産業)から入居時や契約更新時に加入させられている火災保険にも含まれています。
また、クレジットカードなどにも自動的にサービスで付いている場合もありますので、所有しているカード会社に確認してみる必要があります。
この保険は、自転車事故の加害者本人が加入していなくても、一つの保険で家族全員が補償対象になりますので、加害者の以下の家族が加入しているかも確認しましょう。
・加害者の同居の親族
・加害者の別居の両親(加害者が学生などの独身者の場合)
賠償責任保険は、加入する保険により、1億円~無制限まで補償してくれます。
まとめ
自転車は手軽に乗れる交通手段ですが、間違った乗り方をすると大きな事故につながりかねません。
自転車は道路交通法上は「軽車両」に分類されるので、交通法規を守って走行する義務がありますが、多くの人はそのことを理解しないで乗っています。
大きな事故を起こしてからでは遅いので、自転車に乗る人は、必ず自転車事故に備えた保険に加入すべきです。
特に「個人賠償責任保険」は、家族の誰かが加入することで、同居の親族全員と、別居の未婚の子までが補償されますし、保険料も年間2,000円程度で無制限の補償を買うことができますので、自転車に乗っている方は、必ず加入しておきたいものです。
今回事故を起こした女子大生も、自転車事故に対応した保険に加入していることを願います。