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交通事故の場合も労災保険の利用が可能
労災保険は「業務中」や「通勤中」の事故であることが利用できる条件となります。
通常交通事故は、加害者が相手のケガの治療費などを全額支払う義務がありますので、被害者が「業務中」や「通勤中」の場合は、労災保険を使う必要がないのですが、被害者本人が希望すれば、労災保険を利用することができます。
但し、交通事故の被害者になった場合に、労災保険を利用するためには、「第三者行為災害届」を労災保険に提出する必要があります。
自動車保険と労災保険で認められる治療内容は同じ
自動車事故でケガなどをして治療を受ける場合、自動車保険の対人賠償保険(自賠責保険)と労災保険では、認められる治療内容は、ほとんど変わりません。
例えば、次のような重傷を負った場合の治療でも労災保険で認めてくれます。
- 頭を強打した結果、脳障害を発症して、低体温療法が必要になった
- 足の骨折が原因で、左右の足の長さが変わってしまったために、脚延長手術を受けた
加害者からの賠償金と労災給付との調整
労災保険と自動車保険(対人賠償保険・自賠責保険)には、「治療費」や「休業損害」などの、同じ補償項目がありますが、二重に受け取る事ができないために、法令により調整して支払われます。
労災保険の保険給付が先行した場合
政府は加害者に対して損害賠償請求(求償)をします。
自動車保険(自賠責保険)の支払いが先行した場合
労災保険では、自動車保険(自賠責保険)と同一の補償項目(治療費や休業損害など)について、二重に支払われないように、既に自動車保険から支払われた金額を控除して給付されます。
交通事故で労災保険を利用した方が得になる場合とは
「業務中」や「通勤中」に交通事故の被害者になった場合に、被害者にも過失が発生したケースでは、労災保険を利用した方が、受け取れる賠償金が多くなることがあります。
事故の具体例
- 治療費:300万円
- 休業損害:100万円
- 慰謝料:150万円
- 過失割合:(加害者)80% (被害者)20%
損害項目 | 労災利用なし | 労災利用あり |
治療費 | 300万円 | 自己負担なし |
休業損害 | 100万円 | 40万円 (労災から60万円支給あり) |
慰謝料 | 150万円 | 150万円 |
小計 | 550万円 | 190万円 |
過失相殺(20%) | ▲110万円 | ▲38万円 |
受取額 | 440万円 | 152万円 |
治療費支払い | ▲300万円 | 労災から支払い |
労災給付(休業損害) | なし | 60万円 |
労災給付(特別支給金) | なし | 20万円 |
最終受取額 | 140万円 | 232万円 |
(特別給付金=休業損害額×20%)
まとめ
業務中や通勤途中に交通事故に遭って、ケガなどを負った場合は、基本的には加害者(加害者が加入している自動車保険)から治療費などの賠償を受けることになりますが、事故の形態により被害者になった自分にも過失が発生することが少なくありません。
自動車保険では、被害者の過失分を控除して賠償金が支払われますので、被害者にも過失割合に応じて、治療費などの一部について、自己負担が発生してしまいます。
そんな場合には、労災保険を使うことにより、自己負担分が無くなるだけでなく、休業損害などは、労災保険の特別給付金制度を利用することで、実際の収入よりも多く受け取ることができますので、労災保険の利用も検討しましょう。