JAの建物更生共済(建更むてき)を徹底解説

JAの建物更生保険を解説 その他の損害保険

JAグループでは、農業組合員向けに農業指導や経済事業だけでなく、生命保険や損害保険と同様の補償を提供する各種共済を積極的に展開していますが、その中で有名なのが火災共済と建物更生共済(建更むてき)です。

JAとは

JA(Japan Agricultural Cooperativesの略)は、全国農業協同組合中央会が組織する農協グループのことで、その事業内容は多岐にわたりますが、主要3事業として以下のものがあります。

  • 経済事業:農産物の販売、農産物直売所の運営、肥料や農薬、農業機械などの提供、ガソリンスタンドの運営など
  • 信用事業:通称JAバンクで、貯金や個人向けの資産運用、各種ローン、農業従事者向けの事業融資など
  • 共済事業:通称JA共済で、JAグループが運営する営利を目的としない保険機能を提供しています(生命保険や損害保険と同等の保障を提供)

JA共済について

JAグループが行う営利を目的としない保険事業であり、「ひと・いえ・くるま」の保障を提供しています。

「ひと・いえ・くるま」の保障には、生命保険に相当する終身共済や年金共済、第三分野に相当する医療共済、損害保険に相当する火災共済や建物更生共済、自動車共済、自賠責共済などがあります。

JA共済は、農家などの組合員が加入できる制度ですが、今では組合員以外でも一定割合までは加入できるような制度となっています。

「いえの保障」は2種類ある

JA共済では、「いえの保障」として、掛け捨て型の「火災共済」と積立型の「建物更生共済(むてき)」があり、それぞれ保障される内容が異なります。

火災共済と建物更生共済の補償内容比較

掛け捨て型の「火災共済」と積立型の「建物更生共済」の補償内容の比較は以下のとおりとなります。

 火災共済建物更生共済
火災・落雷・破裂・爆発
水濡れ
建物外部からの物体の衝突等
騒じょう
盗難△(盗取は対象外)
風災・ひょう災・雪災×
水災×
地震・噴火・津波等×

火災共済は、掛け金も安く加入しやすいのですが、風災や雪災、水災、地震などの自然災害に全く対応していないため、あまりお勧めできません。

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建物更生共済(建更むてき)の特徴を解説

建物更生共済は、建物や家財などに発生した火災などの他に、自然災害による損害を幅広く保障します。また、それらの損害に伴う各種費用についても保障します。

建物更生共済の基本保障

  • 火災・落雷・破裂・爆発
  • 水濡れ
  • 建物外部からの物体の衝突等
  • 盗難
  • 騒じょう

自然災害の保障

  • 風災・ひょう災・雪災
  • 水災
  • 地震等

その他の共済金

  • 持ち出し家財
  • 通貨などの盗難
  • 傷害共済金(火災等や自然災害により傷害を被った場合 死亡:火災共済金額×30%で一人1000万円限度 後遺障害:火災共済金額×30%×後遺障害等級による支払い割合 一人1000万円限度 傷害:火災共済金額×5% 一人30万円限度)

費用の保障(費用共済金)

  • 損害防止費用(火災等による損害の発生や拡大の防止のために必要・有益な費用を支出した場合に支払われる)
  • 失火見舞費用(火災等で他人の所有物に損害を与えた場合に支払われる 20万円×被災世帯数で共済金額×20%が限度)
  • 臨時費用(火災等や風災・雹災・雪災により共済金が支払われる時に支払われる 共済金の額×30%で250万円が限度)
  • 特別費用(損害割合が80%以上となった場合で共済契約が終了した時に支払われる 共済金額×10%で200万円が限度)
  • 残存物取り片付け費用(共済金の額の10%が限度で実費)

建物更生共済(建更むてき)には満期共済金がある

建物更生共済は、保険期間終了時には、満期共済金が支払われます。
(10型の場合は保障額の10分の1、5型の場合は5分の1、1型の場合は同額)

10型の例:火災共済金額1000万円→満期共済金額100万円(5型では200万円)

満期共済金は共済期間にあわせて、5年後または10年後に支払われますが、「継続特約」をセットすると最長30年後に支払われる契約も可能です。

建物更生共済(建更むてき)の契約パターン

また、「修理費給付特約」をセットすると。満期共済金の一部を共済期間中に受け取ることが可能になります。(ボーナスプラン)

建更の修理費用給付特約

80%以上の損害が発生すると契約が終了して解約金が減らされる?

火災などの損害が発生して、共済金を請求すると契約が終了して、請求した共済金の金額によって解約金が減らされたり、ゼロになったりしてしまいます。

返戻金の額=解約返戻金の額×(1-請求した共済金の額/火災共済金額)
*共済金を100%請求すると解約返戻金はゼロになってしまいます。

建物更生共済(建更むてき)の保障内容で注意したいこと

建物更生共済の保障内容の特徴は、自然災害に対する保障が充実しているところですが、一般の火災保険と異なり、注意するべきことがあります。

「風災・雹債・雪災」は小損害が対象外になっている

一般の火災保険では、「風災・雹債・雪災」について、補償される条件を細かく設定できますので、保険料の予算に応じて免責金額(自己負担額)を設定するなどの選択ができますが、建物更生共済では、「風災・雹債・雪災」が保障される条件が以下の通りに決められています。

建物の損害割合が3%以上または損害の額が5万円以上の場合

地震等の損害の支払い方法は「地震保険」と異なる

建物更生共済の「地震・噴火・津波等」の保障は、一般の「地震保険」とは共済金の支払い方法が異なります。

一般の火災保険で加入する「地震保険」は、加入限度額が火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内となっていますが、建物更生共済の場合は火災共済金額の50%で固定されています。

また、「地震保険」では、損害の状況に応じて「全損」・「大半損」・「小半損」・「一部損」を認定して、その認定に基づいて保険金を計算しますが、建物更生共済は、以下の計算方法で共済金を支払います。

地震共済金=火災共済金×50%×損害割合

 破損・汚損等の保障がない

一般の火災保険には、加入するプランにより「破損・汚損等(不足かつ突発的な事故)」が補償されていますが、建物更生共済では、保障されていません。

一般の火災保険では、家財の保険金請求は「破損・汚損等(不足かつ突発的な事故)」が約半数を占めているほど請求しやすい保障なので、この保障がないことは非常に残念です。

平成29年4月 「むてき」から「むてきプラス」に進化しました

建物更生共済は、平成29年4月に商品改正があり、商品名も「建更むてき」から「建更むてきプラス」に変更されました。

改訂内容は以下のとおりとなっています。

「実損てん補方式」の導入

「建更むてき」では火災共済金額の加入割合が80%未満の場合、例えば「再調達価格」が2000万円の家に加入金額1000万円なら加入割合50%となり、仮に災害で100万円の損害を受けたとしたら縮小支払いとなって、受け取れる金額は50万円+αとなっていました。

「実損てん補特約付きのむてきプラス」ならば、加入割合に関わらず損害額が100%支払われるようになりますので、実際の損害額を受け取れるようになります。

「水災」時にも臨時費用共済金が支払い対象になった

従来の「建更むてき」では、臨時費用共済金は「水災」の時には支払い対象になっていませんでした。

一般の火災保険では、「水災」でも支払い対象となる場合が多いことから、「建更むてきプラス」では、「水災」の場合でも臨時費用共済金が支払われるようになりました。

付属建物・工作物等が自動保障になった

「建更むてき」では。契約時に門や塀、物置(ヨドコウ等)、車庫(カーポートなど)などの付属物は、明記しておかないと保障の対象となりませんでしたが、「建更むてきプラス」では自動保障となり、災害が起きても保障対象とならないような事態が回避されます。

満期共済金額の設定が自由になった

「建更むてき」では、満期共済金額は火災共済金額に対し、10型の場合は保障額の10分の1、5型の場合は5分の1、1型の場合は同額満期金額の1倍と固定されていましたが、ニーズに応じた満期共済金額で加入できるように、満期共済金額を自由に設定できるようになりました。

あわせて設定できる満期共済金額の最低限度を「火災共済金額の10分の1」から「火災共済金額の30分の1」に引き下げ、満期保障を抑えることで掛金負担を軽減することができるようになりました。

まとめ

JAの「建物更生共済」は、今では数少ない満期返戻金がある火災保険として、広く普及しています。

また、地震などの自然災害にも対応していますので、火災保険の加入を検討する場合には、選択肢の一つとして有力な候補となります。

反面、満期共済金があるために、毎月の掛け金が高額になることと、全損事故発生時には、せっかく積み立ててきた掛け金が戻らなくなるリスクもあります。

火災保険は、一般の損害保険会社やネット専門の火災保険など各種保険が販売されていますので、加入を検討するときは、複数の会社から見積もりを取り寄せ、補償と保険料(掛け金)とのバランスで選びたいものです。

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