AIUと富士火災が合併して誕生するAIG損保ってどんな会社?

自動車保険トピックス

2018年1月1日付でAIU 損害保険株式会社(以下AIU損保)と富士火災海上保険株式会社(以下富士火災)の合併により誕生するAIG損害保険株式会社(以下AIG損保)とは一体どんな会社になるのでしょうか?

もともとAIU損保と富士火災は、「AIGジャパン・ホールディングス株式会社の完全子会社であり、以前から合併すると思われていましたが、ようやく2018年1月1日に合併し、AIG損保になる予定です。

AIU損保も富士火災も顧客満足度は高い

毎年公表される自動車保険の顧客満足度調査で、最も権威のある「J.D.パワー社」のランキングではAIU損保も富士火災も常に上位にランクインしています。

代理店型自動車保険ランキング2017年(出典:J.Dパワー社 2017年自動車保険契約者満足度調査)

順位損害保険会社名得点(1000点満点)
1位AIU損保648
2位富士火災628
3位日新火災628
4位東京海上日動620
5位損保ジャパン日本興亜619
6位共栄火災616
 代理店型自動車保険平均616
7位三井住友海上612
8位あいおいニッセイ同和605
9位朝日火災602

2017年の顧客満足度調査では、1位と2位を獲得していますので、2社が合併したあとの新会社も顧客満足度の高い自動車保険を販売することが予想されます。

では、何故顧客満足度の高い2社の損害保険会社が合併する必要があるのでしょうか

AIU損保と富士火災は何故合併する必要があるのか

AIU損保と富士火災の損害保険会社としての2016年度決算状況を見ると、2社が合併する必要があることが鮮明になります。

決算項目AIU損保富士火災
正味収入保険料2511億円(前年比▲60億円)2336億円(前年比▲455億円)
正味損害率47.5%64.2%
事業費率50.0%41.3%
保険引き受け利益▲0.8億円(赤字)▲190.億円(赤字)
経常利益2.9億円▲184億円(赤字)
当期純利益▲10億円(赤字)▲284億円(赤字)
ソルベンシーマージン比率834.8%889.7%
総資産額1828億円8243億円(前年比▲256億)
従業員数2257名4131名
代理店数6962店23283店

正味収入保険料とは
正味収入保険料とは、全ての契約者から集金した保険料から、再保険として他の損害保険会社に転売した金額を引いた額のこと(富士火災の正味収入保険料が2016年度大幅に減少した原因は、再保険を多く販売したためとしています)

正味損害率とは
正味損害率とは、受け取った保険料から支払った保険金の割合であり、目安は60%位とされています。

事業比率とは
事業比率とは、収入保険料に対する会社を運営するのに必要な経費の合計であり、主なものは、人件費、代理店手数料、営業経費、システム維持・管理費などがあり、正味損害率と合計して100を超えると、その会社は赤字になります。(資産運用利益を除く)

経常利益には、保険引き受け利益の他に資産運用利益も含まれますので、保険引き受け利益が赤字でも、資産運用利益が多ければ黒字になります。

AIU損保も富士火災も、一般企業の売り上げに相当する正味収入保険料が減少しており、特に富士火災は前年比で16.3%も減少しています。

また、損害保険会社にとって、正味損害率と事業費率を足した数字が100を超えると赤字となることから、AIU損保は97.5%(正味損害率47.5%+事業比率50.0%)で赤字ギリギリであり、富士火災に至っては、105.5%(正味損害率64.2%+事業比率41.3%)と、合併のための経費を差し引いても、赤字体質なのががハッキリとしています。

代理店型の損害保険会社で経営効率が良好な三井住友海上の2016年度決算状況と比較すると、AIU損保と富士火災の経営がいかに苦しいか理解できると思います。

決算項目三井住友海上(単独)
正味収入保険料1兆4696億円
正味損害率61.2%
事業比率31.2%
保険引き受け利益817億円
経常利益2155億円
当期純利益1645億円
ソルベンシーマージン比率6579%
総資産額6兆7770億円
従業員数14650人
代理店数41305店

三井住友海上の正味損害率と事業比率を足した数字は92.4%(正味損害率61.2%+事業比率31.2%)と、売れば売るほど儲かる体質であることが解ります。

富士火災がAIGグループに入った理由は

AIGジャパン・ホールディングス株式会社の傘下には、AIU損保と富士火災、アメリカンホーム、ジェイアイ傷害火災の4社が存在しますが、何故富士火災がAIGグループに入っているのでしょうか。

1996年に保険業法が改正され、実質的な保険の自由化が始まりましたが、損害保険会社各社は、自由化への対応のために、2001年に株式が上場されていた損害保険会社14社が相次いで合併して、8社に集約されました。(第一次再編)

また、2010年には、更なる効率化のために、第二次再編があり、MA&ADグループとNKSJ(現在のSONPOグループ)グループが発足して、東京海上グループを加えた3メガ損保が誕生しました。

2回の大きな再編の流れの中で、富士火災が合併などをすることなく、単体で生き残っているのは、その販売形態の特殊性にありました。

富士火災がいままで合併しなかった理由

富士火災は、代理店型自動車保険に分類されますので、代理店を通じた保険販売が主流なのですが、富士火災の特殊性として、社員の身分で直接損害保険を販売する「直販社員」の存在がありました。

代理店ではなく、社員として損害保険を販売しますので、代理店とは異なり、他の損害保険会社と比べると、人件費が高い体質だったのです。

その為に、経営の効率化(特に事業比率の圧縮)を目指して合併を繰り返す他の損害保険会社からは敬遠され、合併相手が見つからなかったことが現在まで合併をしなかった原因であり、最終的にAIGグループの傘下に入ることを決断しました。

そんな富士火災も、AIU損保と合併を控えて、直販社員をはじめとする社員のリストラをすすめて、ようやくAIUとの合併が実現しました。

富士火災の従業員数の変化
2012年 5502名
2013年 5033名 ▲469名
2014年 4893名 ▲140名
2015年 4657名 ▲236名
2016年 4131名 ▲526名

AIG損保の今後

AIG損保発足後は、まず最初に赤字体質からの脱却が最優先課題になります。

AIG損保発足後は、現在の2社の数字を単純に合算すると、損害率は55.5%程度になりますので、他の大手損害保険会社と比較しても遜色はなさそうですが、事業比率は大手損害保険会社と比べて非常に高くなっていて、早急に取り組むべき課題です。

事業比率改善の為には社員と代理店のリストラか?

事業比率はAIU損保・富士火災ともに、大手損害保険会社に比べ、非常に高い比率になっていますので、早急に取り組むべき課題となります。

人件費の削減

事業比率の中で最も多くを占めるのが人件費ですが、三井住友海上が従業員1名あたりの正味収入保険料が約1億円なのに対し、AIG損保は従業員1名あたり7500万円となっていますので、更なる人員削減が必要になります。

富士火災の合併の足かせとなっていた「直販社員」は、多くが代理店として独立しましたが、まだまだ従業員の数が多く、AIG損保発足後も人員削減が考えられます。

他の大手損害保険会社は、合併前に従業員の早期退職者を募集して、人員削減をしてきましたので、強硬的なリストラなどはあまりなかったのですが、外資系のAIGグループ傘下のAIG損保の場合は、かなり強硬的なリストラが予想されます。(特に富士火災の40歳以上の従業員がターゲットになる可能性が高いと思われます)

大手損害保険会社が合併する前に行った早期退職者募集は、40歳以上などの一定の年齢以上の社員に対して、割増退職金を払っていましたので、数百人規模の応募がありました。(第一次再編時の早期退職者は、平均1億円受け取れたという情報もあります)

代理店の統廃合と手数料カット

AIG損保の代理店数は、2社の代理店合計で30245店となりますが、代理店1店あたりの収入保険料は約2100万円です。

この代理店1店あたりの収入保険料は、三井住友海上の3500万円と比べると大きな開きがあり、その分多くの経費がかかってしまいます。

また、AIU損保の代理店がほとんど専業のプロ代理店で、その規模が大きいのに対し、富士火災の代理店はプロ代理店以外のモーター系の代理店も多く、小規模な代理店構成となっていますので、代理店の統廃合をすすめる必要があります。

代理店の手数料体系についても、大手損害保険会社並みの水準まで手数料率を引き下げる必要がありそうです

AIG損保の自動車保険は安くならない?

AIU損保の自動車保険は、収入保険料の約20%程度なのに対し、富士火災の自動車保険の割合は50%と、大手損害保険会社並みの比率とななっていますので、合併後のAIG損保は、富士火災の自動車保険を引き継いで販売されると思います。

AIG損保が販売する自動車保険は、富士火災の自動車保険の損害率自体が高いために、保険料を大手損害保険会社より安く販売する可能性は低く、AIU損保のプロ代理店を中心に、専門の知識を生かしたサービスを行い、事故処理やリスクマネジメントなどの付加価値を高めた販売方法になることが予想されます。

AIG損保の自動車保険(AAP)7つの特徴とは?

まとめ

日本の損害保険業界は、大手の3メガ損保グループが90%以上のマーケットシェアを獲得していますが、2018年1月の誕生するAIG損保が、どこまで3メガ損保グループの牙城を崩すことができるか大いに気になります。

もともとAIU損保も富士火災も特色のある損害保険会社で、顧客本位の事故対応などが好評であり、顧客満足度ランキングでも上位にランクインされますので、新会社でも同様に顧客本位のサービスを提供してくれるハズです。

AIGジャパン・ホールディングスは、グループ傘下のアメリカンホームの自動車保険を、2016年11月に募集停止して、契約者をソニー損保に移しました。

そして今回グループ傘下のAIU損保と富士火災を合併させて、日本の損害保険市場に本格的に攻勢をかけてきますので、3メガ損保グループとの熾烈なシュア争いが始まります。

AIG損保が3メガ損保グループに刺激を与えることで、競争の原理が働き、我々契約者により良いサービスや、加入しやすい保険料を提供して欲しいものです。

 

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