2018年3月18日、アメリカ・アリゾナ州で配車サービス大手「Uber(ウーバー)」が開発中の自動運転車が、公道を試験走行中に、自転車を押して道路を横断しようとした女性をはね、女性はその後死亡しました。
地元警察によると、事故が起きたのは午後10時ごろで、車には男性が1人で乗車していて、自動運転の状態で、速度は60キロ以上出ていたとのこと。
この初めて起きた自動運転車による死亡事故により、今後開発と普及が進む自動運転車による事故の責任の所在が、議論されることが予想されます。
今後裁判になり、事故を起こしたウーバー社と実際に乗車していたドライバー、車を提供していた自動車メーカー及び、システム開発会社などの責任割合などが決まると思われます。
もし日本で自動運転による死亡事故が起きたら
このウーパー社の自動運転車の事故が起きた二日後の3月20日に、国土交通省は自動運転中の車が事故を起こした際の責任などについての報告書をとりまとめて公表しました。
この報告書の内容によると、2020年から2025年ころの、自動運転車と手動運転車が混在する過渡期では、迅速な被害者救済のために、現在の自賠法で定めている自動車所有者(運行供用者)の事実上の無過失責任は変わらないとしました。
ただし、自動運転のシステムの欠陥や誤作動が原因の事故については、保険金を支払った保険会社が、自動車メーカーに対する求償権行使の実効性を確保するための仕組みを検討することも確認されています。
このことから、日本では当面の間、自動運転車による人身事故は、従来と変わらず自動車保険の支払い対象になります。
自動運転の定義とその普及時期は
自動運転車の定義は、自動化のレベルに応じて5段階あり、2017年時点では、レベル2の段階にとどまっていて、自動運転車がドライバーの代わりに運転をする「レベル4以上」の実用化は2025年以降と言われています。
自動運転の定義
レベル1
ドライバーの運転支援(自動ブレーキや駐車アシストなど)
レベル2
部分的な自動運転(ドライバーは常に運転を監督する必要がある)
レベル3
条件付きの自動運転(高速道路など限定領域で自動運転システムに運転を任せる)
レベル4
高度な自動運転(高速道路などの領域で自動運転システムに運転を任せる)
レベル5
完全な自動運転(自動運転システムに全て運転を任せる)
自動運転車の普及スピードは?
自動車の平均使用年数は、自動車の性能の向上もあり、毎年長期化していて、平成29年3月末の平均使用年数は、乗用車でなんと12.91年にもなります。
(一般財団法人自動車検査登録情報協会より)
その結果、レベル4以上の自動運転車が2025年頃から実用化され、発売されても、すぐには普及しないのです。
ある損害保険会社の推定データによると、2027年頃の国内の自動車7,300万台のうちレベル4以上の自動運転車は約4万台で、全体の1%未満にとどまるとされています。
このことから、公道を走る全ての車が自動運転車になって、交通事故がゼロになり、自動車保険に加入する必要がなくなるは、相当先の話になります。
自動運転に備える日本の保険会社の対応
自動運転車の普及加速に備えて、日本の損害保険会社は自動車保険の整備に取り組んでいます。
東京海上日動社
東京海上日動社は、2017年4月から、自動運転中の事故を自動車保険の支払い対象とするよう、自動車保険に無料の特約として提供して、事故の被害者が長期間救済されない事態を回避する改定を行った。
損保ジャパン日本興亜
損保ジャパン日本興亜は2017年7月から、東京海上日動社と同様に、自動運転車の事故による被害者救済のために、自動車保険に「被害者救済費用特約」を付帯する。
三井住友海上とあいおいニッセイ同和
三井住友海上とあいおいニッセイ同和は、東京海上日動や損保ジャパン日本興亜社と同様の特約を、2018年1月から自動車保険に自動付帯して、自動運転車の事故に対応する。
まとめ
2018年3月18日、アメリカ・アリゾナ州で発生したウーバーの自動運転車の事故により、自動運転車が引き起こす人身事故についての賠償問題がクローズアップされましたが、日本においては、自賠法(自動車損害賠償保障法)の存在により、従来通り自動車保険の支払い対象になります。
しかしながら、今回のウーバー社事故により、自動運転車の公道実験が行われにくくなったことは事実です。
そのために、自動運転車の開発が遅れることはあまり歓迎できません。
高齢者の交通事故が多発している現状では、この自動運転技術こそが、高齢者の交通事故対策として有効であり、1年でも早く実用化して欲しい技術であることは間違いありません。