自動車保険の「等級」は事故がなく何年も更新していると、保険料の割引がすすんで、安い保険料で加入できるようになりますので、ある意味貴重な財産と言えますが、名義変更できる人の範囲が決まっていて、誰にでも名義変更ができるわけではありません。
目次
自動車保険の名義変更とは
自動車保険の名義には、「契約者」、「記名被保険者」、「車両所有者」という3種類があります。
「契約者」とは、自動車保険に申し込んで、保険料の支払いをして、その契約を管理する人のことであり、事故を起こして保険金を請求する場合、原則契約者の同意が必要となります。
「記名被保険者」とは、契約している車を主に運転する人のことで、この「記名被保険者」を中心に補償されます。
自動車保険の等級の権利はこの「記名被保険者」が持っていますので、名義変更する場合は「記名被保険者」の変更が必要です。(加入する保険会社により、「本人」や「賠償被保険者」と言う場合もあります)
「車両所有者」とは文字通り、車を所有している人のことで、自動車保険に加入する車の車検証に記載されています。
自動車保険の名義変更ができる範囲
自動車保険の権利を譲りたい場合、名義変更という手続きができますが、譲れる範囲が決まっていて、名義変更可能な範囲は、加入している自動車保険の記名被保険者の配偶者と「同居の親族」だけです。
自動車保険の「家族」と混同しがちですが、配偶者であれば、別居していても名義変更はできますので、単身赴任などで夫婦が別居していても夫婦間であれば名義変更はできますが、それ以外の親族は別居していると名義変更ができません。
別居のお子さんに変更したい場合の注意点
自動車保険の名義変更は、記名被保険者の配偶者は別居していても、名義変更は可能ですが、別居のお子さんは名義変更ができないため、別居が決まった段階で名義変更をして、その後に、お子さん名義になった自動車保険の住所変更をする方法が一般的です。
あくまで同居が条件となりますので、別居してからでは名義変更ができませんので、注意が必要です。
名義変更の手続き
自動車保険の名義変更手続きは非常に簡単です。
加入している損害保険会社または代理店に名義変更手続きを依頼するだけですが、損害保険会社によっては、名義変更前の記名被保険者と名義変更する記名被保険者の住所を証明する確認書類(両者の運転免許証や住民票または、郵便物のコピーなど)が必要になります。
一般的には、1年間の保険期間内で、1回目の名義変更では、確認書類は必要なく、2回目以降の名義変更の時に必要になる場合が多いですが、損害保険会社によってルールが異なりますので、加入している会社に確認が必要です。
個人と法人の名義変更はできるか
個人と法人は「別人格」なので、個人から法人や法人から個人への名義変更はできません。
ただし、個人で事業をしていた人(個人事業主)がその事業を法人化した場合や、法人を解散して、個人として事業を継続する場合などは、一定の書類を添えて自動車保険会社に申し出れば、名義変更は可能です。
一定の書類は各損害保険会社によって取り扱いが異なりますが、個人と法人の事業の継続性が証明できる書面、たとえば、顧問税理士や社会保険労務士などの証明書等が必要になります。
参考:個人から法人への等級引き継ぎルールと事故歴をリセットする方法
車を買い替える場合の注意点
自動車保険に加入している車を買い替える場合に、車検証上の「車両所有者」が同居の親族以外の名義になっていると、「車両入替」手続きができません。
例えば、別居のお子さんの名義で車を購入しても、その車を別居している家族の自動車保険には車両入替手続きができないのです。
但し、次の場合は車両入替手続きができます。
車両使用者:記名被保険者またはその配偶者、同居の親族
車をローンで買った場合の、いわゆる「所有権留保」付きの場合やリース車などは、車検証上の「使用者」が記名被保険者及びその配偶者または同居の親族なら車両入替手続きが可能になります。
記名被保険者が死亡した場合
記名被保険者が死亡した場合でも、等級は引き継ぐことができます。
契約者と記名被保険者が異なる場合は、契約者が記名被保険者の変更手続きを行えば、死亡した記名被保険者が持っていた等級を引き継ぐことができます。
また、契約者と記名被保険者が同一人の場合は、法定相続人に名義変更をして、等級を引き継ぐことができますが、いずれの場合も、等級を引き継ぐには、新しい記名被保険者が、名義変更可能な範囲(記名被保険者の配偶者または、記名被保険者の同居の親族)である必要があります。
手続き自体は、損害保険会社で必要となる書類が異なりますで、加入している会社に確認してください。
離婚後の夫婦間の名義変更
結構質問が多いことですが、離婚をしてしまった後に、夫婦間での名義変更の手続きをしたいとの要望です。
自動車保険の名義変更はあくまで、名義変更可能な範囲内だけであり、離婚成立後の名義変更はできませんので、必ず離婚届けを提出する前に、名義変更の手続きをすることをおすすめします。
まとめ
自動車保険の等級は、何年もかけて手に入れた保険料割引の権利です。
ちょっとしたことから、その権利を失くしてしまわないように注意したいものです。
特に同居していたお子さんが、就職や進学などで別居が決まり、転居先で車を購入するなどのことが判明している場合は、同居している間にお子さんに記名被保険者の変更をしてしまいたいものです。
お子さんの年齢が若い場合などは、自動車保険の保険料が高額になりますので、割引が大きい等級の権利を譲渡することで、割安な保険料で加入できます。