電動キックボードとは、モーターとバッテリーで走行でき、省エネ・省スペースが特徴で、手軽に利用できる移動手段として人気の個人用モビリティです。
日本では原動機付自転車に分類され、保安部品を装備することによりナンバーを取得し、公道を走行することができますが、利用者が増えるにしたがって、事故も目立つようになってきました。
警視庁によると、都内では電動キックボードが関係する事故が2021年1月~11月末までにあわせて60件に上り、16人がけがをしています。
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事故が多発する可能性を秘めた電動キックボード
2021年6月2日午後7時10分ごろ、東京都新宿区新宿3丁目の交差点で、飲食店従業員女性(23)が電動キックボードを無免許運転し、赤信号を無視して直進。左側から来たタクシーと衝突し、乗客の40代男性の頭に軽いけがを負わせるなどした事故が発生しています。
このような事故は今後さらに発生する可能性があり、歩行者などと衝突した場合は最悪死亡事故になることが予想されます。
電動キックボードの事故に個人賠償保険は使えるのか?
自転車による事故の多発を受けて多くの自治体では、自転車事故の賠償に備える「個人賠償責任保険(日常生活賠償保険)」などの保険に加入することを義務化していますが、電動キックボードの事故にこの保険が使えるのでしょうか?
個人賠償責任保険の特徴とは
個人賠償責任保険とは、損害保険会社が販売している自動車保険や火災保険、傷害保険などに特約で加入できる手軽な保険です。
個人賠償責任保険は被保険者(契約した本人)かその家族が日常生活上の偶然な事故で、法律上の賠償責任を負った場合に、被害者に対し賠償金を支払える保険ですが、対象にならない事故が以下の通り規定されています。
第5条(保険金を支払わない場合-その2)
(1)当会社は、被保険者が次のいずれかに該当する損害賠償責任を負担することによって被っ
た損害に対しては、保険金を支払いません。
① 被保険者の職務遂行に直接起因する損害賠償責任
② 専ら被保険者の職務の用に供される動産または不動産(注1)の所有、使用または管理
に起因する損害賠償責任
③ 被保険者と同居する親族に対する損害賠償責任
④ 被保険者の使用人(注2)が被保険者の事業または業務に従事中に被った身体の障害に
起因する損害賠償責任
⑤ 被保険者が損害賠償に関し第三者との間に特約を締結している場合は、その特約によっ
て加重された損害賠償責任
⑥ 被保険者が所有、使用または管理する財物の損壊について、その財物について正当な権
利を有する者に対して負担する損害賠償責任
⑦ 被保険者の心神喪失に起因する損害賠償責任
⑧ 被保険者または被保険者の指図による暴行または殴打に起因する損害賠償責任
⑨ 航空機、船舶・車両(注3)または銃器(注4)の所有、使用または管理に起因する損
害賠償責任
(注1)住宅の一部が専ら被保険者の職務の用に供される場合は、その部分を含みます。
(注2)被保険者が家事使用人として使用する者を除きます。
(注3)原動力が専ら人力であるものおよびゴルフ場構内におけるゴルフ・カートを除きます。
(注4)空気銃を除きます。
*ソニー損保の総合自動車保険TypeSの約款(個人賠償責任補償特約 )からの抜粋
電動キックボードは道路交通法上「原動機付自転車」と規定されていますので、上記約款上の「車両の所有、使用または管理に起因する損害賠償責任」に該当して保険金支払いの対象とはなりません。
電動キックボードについて
キックボード(車輪付きの板)に取り付けられた電動式のモーター(原動機(定格出力0.60キロワット以下))により走行する電動キックボードについては、道路交通法並びに道路運送車両法上の原動機付自転車に該当します。
(定格出力0.60キロワットを超える場合、その数値に応じたそれぞれの車両区分に該当します。)
よって、電動キックボードは原動機付自転車を運転することができる免許が必要であるほか、以下のことが義務付けられています。
- 運転免許が必要、車道通行、ヘルメットの着用義務等があること
制動装置、前照灯、後写鏡等を備えていること
自賠責保険(共済)の契約をしていること
区市町村税条例で定める標識(ナンバープレート)を取り付けていること
*警視庁のHPより引用
電動キックボードで加入すべき保険は?
上記のとおり電動キックボードは「原動機付自転車(原付バイク)」に該当しますので、個別に自動車保険に加入するか、既に自動車保険に加入している人は「ファミリーバイク特約」に加入することができます。
保険料はファミリーバイク特約に加入する方が安い場合が多く、複数の電動バイクを所有していても1件の特約で全て補償の対象になります。
また、他人から借りた電動キックボードでの事故も対象になります。(保険会社により異なる場合がありますので確認が必要です)
また、ファミリーバイク特約で保険を使っても「ノーカウント事故」になり、等級に影響しないため、翌年保険料が高くなることはありません。
2021年12月23日に電動キックボードの規制緩和報道がありました。
2021年12月23日に警察庁が電動キックボードに関する規制緩和を行うために法改正を検討しているという報道がありました。。
その内容は、免許不要やヘルメットの任意着用などの規制緩和であり、この規制緩和が実現すると今まで全て原付扱いであった電動キックボードは、その一部が小型低速車という新区分でもっと手軽な乗り物になり、一気に普及する可能性があります。
この場合でも電動キックボードは「車両」であることに変わりがないので、保険の扱いは変わらないと思います。