誰もが経験していると思いますが、歩道を歩いている時に、スマホを見ながら走ってくる自転車や、会話をしながら横に並んで走っている自転車と衝突しそうになることがありますが、自転車事故は立派な交通事故なのです。
自転車と歩行者が衝突すれば、多くの場合歩行者が転倒したりして、打撲や骨折などのケガを負ってしまい、中には重傷になり後遺障害が残ってしまう場合もありますが、その時被害者はどうしたらいいのでしょうか。
目次
自転車事故に遭った時に必ずやるべきこと
歩行者と自転車の衝突事故は、簡単に考えがちですが、立派な「交通事故」なので、車での事故と同じような対処が必要です。
警察を呼んで交通事故(人身事故)届けを出す
自転車に乗っている人のほとんどは、自転車が道路交通法上では「軽車両」に分類され、車の仲間であることを知りませんので、歩行者と衝突しても謝るだけで、その場を走り去ってしまうことが多いのが実情ですが、歩行者が自転車事故でケガを負った場合には、必ず警察を呼んで交通事故届けを出しましょう。(ケガをしている場合は人身事故届け)
警察は交通事故が発生しますと、交通事故の現場を実況見分して、「実況見分調書」を作成しますが、これをしておくと、後日「交通事故証明書」の請求ができますので、目撃者などが居ない場合には、この「交通事故証明書」が唯一の自転車事故の被害者になった「証拠」となります。
自転車に乗って人身事故を起こした加害者が、必ず被害者に対して治療費や慰謝料などの支払いをしてくれるとは限りませんので、後日裁判などに発展した時に必要になってきます。
たとえ小さなケガでも病院に行って診察を受ける
自転車と歩行者が衝突した場合、歩行者が軽い打撲程度のケガしか負っていないと、そのまま病院に行かずに済ませてしまうことが多いと思いますが、転倒などをすると、数日後に「むちうち症」などの症状が出てくることも少なくありません。
また、転倒で頭などを強打していると、数週間後や数か月後に記憶障害などの症状が出てくる場合もありますので、自転車事故などの被害者になった場合は、外傷や痛みなどがなくても必ず医師の診断を受けておきましょう。
自転車事故の加害者が保険に加入しているかを確認する
自転車事故の場合、車の事故と異なり、加害者が自転車事故に対応した保険に加入している可能性があまり高くありません。
車であれば、必ず加入する自賠責保険や、ほとんどの人が加入する自動車保険から治療費や慰謝料などの賠償を受けることができますが、自転車事故の場合、被害者に支払う賠償金を支払う保険に加入しているかを確認する必要があります。
自転車事故を補償している保険は3種類あります。
TSマーク自転車保険
TSマークとは自転車安全整備店で点検・整備をした普通自転車に貼る保険が付いたシールで、この整備すると、その整備の内容に応じた自転車事故の保険が自動的に付いています。
TSマーク自転車保険は、整備内容により、「青色TSマーク」と「赤色TSマーク」と2種類あり、それぞれ補償内容が異なります。
○ 青色TSマーク
補償内容 | 支払い限度額 | ||
賠償補償 | 死亡・後遺障害(1~7級) 1,000万円 | ||
傷害補償(搭乗者) | 入院15日以上 | 一律1万円 | |
死亡・後遺障害(1~7級) | 一律30万円 |
補償内容 | 支払い限度額 | ||
賠償補償 | 死亡・後遺障害(1~7級) 1億円 | ||
傷害補償(搭乗者) | 入院15日以上 | 一律10万円 | |
死亡・後遺障害(1~7級) | 一律100万円 | ||
被害者見舞金(入院15日以上) | 一律10万円 |
但し、TSマーク自転車保険は、自転車を毎年整備していないと補償されないことと、賠償限度額が赤色TSマークでも最高5,000万円と非常に低いので、大きなケガや後遺障害の場合は不足してきます。
自転車保険
自転車保険は、以前大手損害保険会社全社が販売していましたが、盗難等の事故が多発して損害率が悪化したため、今は販売を停止していることが多く、現在加入できるのは、ダイレクト型かコンビニで加入する方法が一般的です。
代表的なのは
〇au損保の「自転車向け保険 Bycle」
加入コースは2つ
「自転車向け保険 Bycle」
賠償保険1億円または2億円、交通事故に限定した傷害保険、弁護士費用がセット
保険料は毎月370円~「自転車向け保険 Bycle Best」
賠償保険1億円または2億円、日常生活も補償される傷害保険、弁護士費用がセット
保険料は毎月880円~
全て示談交渉サービス付き〇セブンイレブンの「自転車向け保険」
補償範囲が「本人型」夫婦型」「家族型」の3タイプ
賠償保険3億円、交通事故に限定した傷害保険、
保険料は
本人型 毎月333円
夫婦型 毎月436円
家族型 毎月601円セブンイレブンのマルチコピー機での手続きと、インターネット加入が選択できます。(セブンイレブンが販売していますが、引き受け保険会社は三井住友海上です)
全て示談交渉サービス付き
但し、自転車保険はそれほど普及していませんので、あまり期待はできません。
個人賠償責任保険
日常生活上の賠償事故に幅広く対応できる特約で、自動車保険だけでなく、火災保険や傷害保険にもセットできる保険です。
割と一般的な特約なので、アパートや借家など賃貸住宅に住んでいる人は、仲介業者(不動産業)から入居時や契約更新時に加入させられている火災保険にも含まれています。
また、クレジットカードなどにも自動的にサービスで付いている場合もありますので、所有しているカード会社に確認してみる必要があります。
この保険は、自転車事故の加害者本人が加入していなくても、一つの保険で家族全員が補償対象になりますので、加害者の以下の家族が加入しているかも確認しましょう。
・加害者の同居の親族
・加害者の別居の両親(加害者が学生などの独身者の場合)
自転車事故の被害者になる前に自分でできる対策は?
自転車事故の被害者になった場合、加害者が自転車事故に備えた保険に加入していないと、十分な補償を受けることができないだけでなく、最悪の場合、何の賠償もされない可能性があります。
そんな最悪の場合に備えて、自分で対策をしておく必要があります。
自動車保険に「自転車特約」をプラスする
自動車保険には、記名被保険者やその家族が自転車事故により、ケガや死亡した場合に補償される特約があります。
損害保険会社によりその呼び名が微妙に異なりますが、「自転車特約」や「自転車傷害補償特約」、「交通事故特約」などの名前で販売されています。
保険会社別自転車特約
保険会社名 | 特約名 | 死亡・後遺障害補償 | 医療補償 |
東京海上日動 | 自転車傷害補償特約 | 300万円 | 入院 5日未満1万円 5日以上10万~100万 |
三井住友海上 | 交通乗用具事故特約 | 人身傷害保険に準じる | 人身傷害保険に準じる |
あいおいニッセイ同和 | 交通事故特約 | 人身傷害保険に準じる | 人身傷害保険に準じる |
JAのマイカー共済 | 交通事故危険補償特約 | 人身傷害保険に準じる | 人身傷害保険に準じる |
三井ダイレクト | ファミリー傷害特約 | 補償なし | 入院1日5000円 通院1日1000円 |
セゾン自動車火災 | 自転車傷害特約 | 500万円 | 入院1日5000円 5日以上入院で 一時金10万円 |
SBI損保 | 自転車事故補償特約 | 1000万円 | 治療日数5日以上で 部位症状別一時金 |
各損害保険会社別でみると、人身傷害保険と同等の補償と、傷害保険で補償するパターンと2通りありますが、補償内容は圧倒的に人身傷害と同等の特約の方が有利なので、三井純友海上やあいおいニッセイ同和、JAのマイカー共済が安心です。
尚、損害保険会社によって取り扱いは異なりますが、「自転車特約」だけを請求する事故は、「ノーカウント事故」として取り扱われ、自動車保険の「等級」には影響ありません。
日常生活用の弁護士特約に加入する
日常生活弁護士特約とは、自動車事故以外の日常生活上の被害事故で、加害者との交渉で弁護士が必要となったときの費用を補償してくれる特約です。
歩道や横断歩道などで、自転車に衝突された事故の過失割合は、自転車が100%悪い場合が多く、被害者が加入している「日常生活弁護士特約」で、加害者との交渉を弁護士に依頼する費用を請求することができます。
自転車に乗っている人は、自転車が危険な乗り物であることを理解していない人が少なくなく、「個人賠償責任保険」や「自転車保険」などの自転車事故に備えた保険に加入していない人が多いのです。
その為、自転車事故の加害者になった人は、被害者の治療費や後遺障害の賠償を保険に頼ることができず、自分で支払うことになりますが、支払う意思がなかったり、そもそも支払い能力がなかったりします。
そんな時に加害者との交渉を弁護士に依頼できるので、加入しておくことをおすすめします。
保険会社別日常生活弁護士特約の補償内容
保険会社名 | 特約名 | 弁護士費用 | 法律相談費用 |
あいおいニッセイ同和 | 日常生活弁護士特約 | 300万円 | 10万円 |
三井住友海上 | 弁護士費用特約 | 300万円 | 10万円 |
ソニー損保 | 弁護士特約 (自動車+日常事故) | 300万円 | 10万円 |
アクサ損保 | 弁護士費用等補償特約 | 300万円 | 10万円 |
*この特約は、一つの契約で「家族」全員が補償されるので、2つ以上の契約をしますと補償の重複となり、保険料が無駄になります。
日常生活弁護士特約の保険料は、損害保険会社により異なりますが、年間約500円程度と非常に安いので、加入しておくことをおすすめします。
まとめ
自転車は手軽で、誰でも利用できる便利な乗り物ですが、道路交通法上は「軽車両」に分類され、道路交通法を守る義務があるのに、まったく守られていない自転車が多いのが現状で、歩道などの自転車の通行が禁止されている道を結構なスピードで走っています。
自転車で歩行者に衝突すると、歩行者のケガや後遺後遺障害、死亡などに対して賠償責任を負いますが、そのために備えて有効な保険に加入している人の割合は、あまり多くはありませんので、自分が自転車事故の被害者になった場合に備えておく必要があります。
自転車事故を起こした加害者と、被害を受けた歩行者の両方とも有効な保険に加入していない場合は、ケガの治療費や慰謝料の支払いについて、話し合いを行うことになりますが、お互い素人であり、交渉が長引いたり、そもそも加害者が賠償金を支払わなかったり、支払い能力がなかったりしますので、満足な補償を受けられないことも珍しくありません。
歩道を歩いていて、前から「ながらスマホ」で走ってくる自転車と衝突しそうになることは、決して珍しくなく、いつでも自転車事故の被害者になる可能性がありますので、そのための対策を必ずしておきましょう。