交通事故の解決方法
事故解決の方法は大きく分けて 「示談」「即決和解」「調停」「裁判」の4種類があります。
目次
示談
被害者と加害者がお互い話し合い、事故の状況などを総合的に考慮し、社会的水準からみて妥当な賠償額の授受を約束して、円満な解決を図るものです。
当事者双方の合意があれば成立しますので(民法第695条)簡単でで、かつ費用もかからないため、交通事故による損害賠償の大部分はこの示談によって解決されています。
示談の効力
示談は一種の契約とされているため、原則としてどんな内容の示談も可能ですが、一度成立すると当事者はこれに拘束され、覆すことは許されません。
一般的に示談は示談書を作成して成立しますが、口頭でも成立してしまいます。
よくあることですが、事故現場などで事故の当事者(被保険者)が「私が全部払います」などの口約束をしてしまっても、示談として成立してしまいます。
後で相手にも過失があることが判明しても、保険会社は被保険者の過失分しか払ってくれませんので、被保険者は保険会社の支払額との差額を自己負担してでも示談内容を履行することになります。
しかしながら、予期しない後遺症が発生したなど、大幅な事情変更が事後に生じた場合や公序良俗に反するような示談は無効となることがあります。
(民法第696条・第90条・第95条)
示談書について
◇示談書作成の必要性
示談は加害者・被害者の合意があった時に成立するもので、お互いの口頭の意思表示だけでも有効です。
示談書は必ずしも作成しなけばならないというものではないですが、後日、争いが起きたときに、口約束だけで示談書を交わしていないと、示談が成立していることや示談の内容を立証することが非常に困難になりますので、その為にも示談書を作成し、文章で示談内容を残しておくことが重要となります。
◇示談書作成の注意点
◎事故の事実関係(当事者・事故月日・場所・事故状況など)をはっきり記載する。
◎相手方が正当な資格者であるかどうかを確認する。
特に相手が代理人の場合や未成年の場合は注意が必要です。
・代理人の場合
委任を受けているかどうか、委任の範囲内であるかの確認(委任者の印鑑証明添付の委任状が必要)
・未成年者の場合
通常、法定代理人には親権者がなり、法定代理人と示談する。
◎示談書の条件をはっきりさせ、示談額(賠償額)が明確につかめるように記載する。
◎示談成立年月日を必ず記載する。
◇承諾書(免責証書)
最近は示談書に代わるものとして、承諾書が使用されています。
主として被害者側から加害者あてに捺印して渡すことで加害者の捺印の手間を省いたものです。
◇電話示談(示談書・承諾書の省略)
対物事故の場合で相手方に過失がない場合とお互いに過失が発生するが、お互いの保険会社が窓口となっている場合で一定要件を満たす場合には、電話による示談を行うことで、上記示談書・承諾書(免責証書)の作成を省略することができます。
保険会社による「示談交渉サービス」
自動車保険の「対人賠償責任保険」と「対物賠償責任保険」には保険会社による示談交渉サービスが付いています。
◇ 示談交渉サービスの主な内容
◎ 対人事故・対物事故について、保険会社は直接被害者との折衝・示談・調停・訴訟などを行います。
◎ 対人事故・対物事故について被害者から保険会社に直接損害賠償直接請求できます。
◎ 自動車保険では、示談交渉(対人・対物)にかかった費用、訴訟費用、判決による遅延損害金を保険金額の枠外で全額払ってもらえます。
即決和解
当事者間での話合いがまとまった段階で、簡易裁判所に和解を申し立て、公判の場で示談条項を和解調書に作成する方法です。
この調書は裁判による判決と同様の効力を持ちます。
調停
公的機関(原則として相手が居住する地区の簡易裁判所に申し立てる)を利用し、当事者が互いに譲歩して解決する民事上の手続のことで、判決と同様な効果を持ちます。(民事調停法第1条・3条・16条)
調停は学識経験者などで構成されている調停委員会が当事者の良識ある話合を斡旋する形式で進められるもので、正式の訴訟に比べ費用も安く、迅速に結論が出る点が長所です。
◇ 費用は請求額に応じた、手数料(2,800円から43,300円の印紙代)と切手代です。
訴訟
当事者間で話し合いがつかない場合には訴訟(裁判)で争うことになります。
◇ 訴訟上の和解
訴訟となっても必ずしも判決まで行くとは限らず、裁判官の勧告により和解で解決する場合が多くあります。
和解が成立すると和解調書が作成され、判決と同様な効果を持ちます。
◇判決
最後まで当事者間で妥協が見られない場合は、判決に従うことになります。なお、判決に不服の場合は上訴することができます。
◇少額訴訟
損害額が60万円以下の金銭の支払を請求する訴訟(同一の簡易裁判所において同年に10回まで)特別の事情がある場合を除き、一回の口頭弁論期日で審理を完了することとなっています。一回で判決がでるので解決が早いことが利点です。
「交通事故紛争処理センター」について
保険会社が支払う保険金または損害賠償額について、万一にも不満が生じたときのために、中立でしかも独立した機関である「交通事故紛争処理センター」が設置されています。
この紛争処理センターでは、学識経験者および弁護士からなる委員が無料で、被害者の正当な利益を守るため、公正な立場から和解の斡旋を行なっています。
「そんぽADRセンター」について
日本損害保険協会のお客さま対応窓口で、専門の相談員が交通事故に関する相談、その他損害保険に関する相談に対応しています。
また保険業法に基づく、指定紛争解決機関(金融ADR)として、損害保険会社とのトラブルが解決しない場合の苦情の受付や損害保険会社との間の紛争支援(和解案の提示等)を行っています。
◎相談対応
専門の相談員が、交通事故に関する相談、その他損害損害保険に関する相談について対応しています。
◎苦情対応
契約者と損害保険会社とのトラブルに関する苦情を受け付けています。
損害保険会社に苦情の内容を通知して対応を求めることにより、当事者同士の交渉のによるトラブル解決を促しています。
◎紛争対応
契約者と損害保険会社との間でトラブルが苦情解決手続き等によって解決しない場合には紛争解決手続きの申立てをすることができます。
紛争解決手続きでは、専門の知識や経験を有する紛争解決委員(弁護士など)が中立・公正な立場から解決支援を行っています。