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「歩きスマホ」は法律で規制されていない?
2017年10月25日にハワイのホノルルで「歩きスマホ禁止令」が施行されました。
この背景には、アメリカで「歩きスマホ」による事件や被害、ケガが増加しており、社会問題にもなっているからです。
その内容は、緊急の用事以外、スマホの操作やメール送信、ゲームは禁止で、違反すると初めての場合は35ドル(約4,000円、1年以内に3回以上の場合は最高99ドル(約12,000円)の罰金が課せられるという内容です。
これはスマホに限らず、デジカメやノートパソコン、タブレット端末など全てのモバイル端末が罰則対象で、現地の人だけでなく、観光客も対象になります。
残念ながら日本には「歩きスマホ」に対する規制はありません。
車や自転車の運転中はスマホ操作禁止
車の運転をしながらスマホを操作したり画面を見たりする行為は、道路交通法で禁止されていて、携帯電話使用等(交通の危険)は反則金9000円と2点減点、携帯電話使用等(保持)は反則金6000円と1点減点です(普通車の場合)。
また、自転車に乗りながらの「ながらスマホ」は、2015年6月の「改正道路交通法」で取り締まり対象になり、3年に2回以上違反すると「安全講習の受講」(参加料5,700円)が義務づけられ、通知から3ヶ月間応じなければ5万円以下の罰金が科せられます。
特に自転車スマホなどは、事故を起こすことで多額の損害賠償を請求される可能性がありますので、注意が必要です。
参考記事:女子大生が自転車スマホで死亡事故 賠償金はどうなる?
「歩きスマホ」で最もケガをしているのはなんと40代?
「歩きスマホ」は、画面を注視することが多く、視野が狭くなるために、周囲の状況が掴みにくい状態で歩いている場合が多いので、人や物(電柱や車など)に衝突する可能性が高くなっています。
東京消防庁では、「歩きスマホ」などの「ながらスマホ」による事故で緊急搬送された統計を発表しています。
統計で意外なのは、最も多く「ながらスマホ」で緊急搬送された年齢は、若い10代や20代ではなく、40代の人です。
親の世代が「ながらスマホ」をしているのに、子供に注意するとは思えないですね。
また、緊急搬送された約半数近くが、人や物(電柱や車など)に衝突しています。
「歩きスマホ」でも高額な損害賠償金を請求される可能性がある?
「歩きスマホ」で歩行者と衝突して死傷させると、場合によっては過失傷害罪(刑法209条1項、30万円以下の罰金又は科料)、過失致死罪(刑法210条、50万円以下の罰金)に処せられることもあります。
また、「歩きスマホ」中の事故では、民事上の責任も問われます。人をケガさせたら、ケガの程度によっては数万円~数千万円の賠償が命じられることもあります。
約779万円の賠償命令〔東京地方裁判所 2006年6月15日判決〕
路上で目当ての店を探していた25歳の女性が、人通りの多い交差点で立ち止まって振り返った瞬間に、91歳のお婆さんと接触して転倒させてしまい、お婆さんは大腿骨を折るなどの重傷を負った。
道路を歩く者は、自分の身体的能力に合わせ、進路や速度を考えて、他の歩行者と衝突しないように注意する義務がある。(ただし、お婆さんにも注意義務への違反があったとして、30%の減額)
その後、同年10月18日東京高等裁判所が、歩いて店を探し、振り返ったときに他人と衝突しケガを負わせたからといって、それだけで責任を認めることは困難であるとして、上記地裁の判決を破棄していますが、もし25歳の女性が「歩きスマホ」をしていたら、高裁での逆転判決はなかったと思われます。
「歩きスマホ」で他人をケガさせても「個人賠償責任保険」は有効?
自動車保険などに特約として加入できる「個人賠償責任保険」は、保険金を支払う要件を次のように規定しています。
「歩きスマホ」をして、他人と衝突してケガを負わせたり、他人の物を壊した場合は、「日常生活に起因する偶然な事故」に該当しますので、保険金支払いの対象になります。
但し、個人賠償責任保険の規定には、「被保険者の職務遂行に直接起因する損害賠償責任」は保険金支払いの対象にはならないとされていますので、仕事中に取引の相手先や職場とのやりとりをしている場合は補償の対象外になります。
まとめ
「歩きスマホ」は、意外に年齢に関係なく行っている人が多いですが、事故が多発しているために社会問題となっています。
2018年7月19日には、静岡市にあるJR東海道線の東静岡駅で、「歩きスマホ」が原因で、男子中学生(14)が列車とホームの間に挟まれて死亡する痛ましい事故が発生しました。
「歩きスマホ」は人や車などに衝突することで、本人が死傷するだけでなく、他人の身体や財物を損傷して、多額の賠償請求をされる可能性があります。
個人賠償責任保険に加入していれば、ある程度は補償されますが、業務中は対象外になるなど完ぺきではありませんので、「歩きスマホ」は止めておきましょう。