個人から法人への等級引き継ぎルールと事故歴をリセットする方法

自動車保険の等級制度

自動車保険の等級は、個人契約から法人契約に引き継ぐことはできませんが、一定の条件を満たせば引き継ぐことができます。

個人と法人は等級の引き継ぎができない

自動車保険を契約する場合、個人で契約する場合と、会社(法人)で契約する場合と2種類ありますが、個人と法人は全く別に扱われるので、個人から法人や、法人から個人などの等級引き継ぎはできません。

例えば、自動車保険に個人名義で加入していた契約を、等級を引き継いで、法人の契約に変更はできませんので、全く新規の扱いになり、6(S)等級で契約することになります。

個人から法人に等級引継ぎできない

自動車保険の契約者だけを法人に変える場合

自動車保険の等級は、記名被保険者に権利がありますので、記名被保険者を変えずに、契約者だけを法人に変更することは可能です。

例えば、個人所有の車を会社の業務に使用するために、会社が契約者となり、自動車保険の保険料を会社が支払う場合などは、記名被保険者を変更しないで、契約者だけを会社に変更することは可能です。

この場合、契約者は会社であり、保険料も会社で支払っていますので、支払った保険料は損金扱いで経理処理できます。

自動車保険の契約者だけを法人に変える場合

個人から法人に等級の引き継ぎができる場合

個人から法人または、法人から個人に等級引き継ぎは一定の条件を満たせば、できる場合があります。

個人から法人に等級の引き継ぎ

今まで個人事業主として、事業を行っていた人が、その事業を法人化した場合には、3つの条件を満たして、必要な書類を添えて保険会社に提出すれば、自動車保険の等級を個人から法人に引き継ぐことができます。

  1. 法人が新設法人であること
  2. 事業に同一性があること(個人事業主が行っていた事業の全部または一部が新設された会社に引き継がれていること)
  3. 契約している車が同じであること(契約している車が変わった場合でも、車両入替ができるグループの車種であれば、同じ車とみなします)

個人から法人に等級を引き継ぐ場合に必要な書類

必ず必要な書類確認する内容
登記事項証明書(旧登記簿謄本)のコピー新設法人の設立日
下記のうちのどれか確認内容
労働保険の「名称・所在地変更届控」のコピー
(提出先の受付印があること)
変更前後の名称を確認
社会保険の「適用事業所所在地/名称変更届控」のコピー(提出先の受付印があること)
「法人設立届出書控」のコピー
(個人事業主の氏名・事業内容の記載があり、税務署の受領印があること)
変更前後の名称及び個人と法人の事業の同一性が確認できる
税理士・社会保険労務士等または、協同組合や商店会などの代表者による「確認書」
「個人事業の開業・廃業等届出書控」のコピー
(届出書の区分が廃業に〇があり、事業継承先のと住所・氏名が一致していること)

法人から個人に等級の引き継ぎ

今まで法人として、事業を行っていた人が、その法人を解散して、個人事業主になった場合にも、3つの条件を満たして、必要な書類を添えて保険会社に提出すれば、自動車保険の等級を法人から個人に引き継ぐことができます。

  1. 法人が解散されていること
  2. 事業に同一性があること(解散された法人が行っていた事業の全部または一部が個人に引き継がれていること)
  3. 契約している車が同じであること(契約している車が変わった場合でも、車両入替ができるグループの車種であれば、同じ車とみなします)

法人から個人に等級を引き継ぐ場合に必要な書類

必ず必要な書類確認する内容
登記事項証明書(旧登記簿謄本)のコピー法人の解散日
下記のうちのどれか確認内容
労働保険の「名称・所在地変更届控」のコピー
(提出先の受付印があること)
変更前後の名称を確認
社会保険の「適用事業所所在地/名称変更届控」のコピー(提出先の受付印があること)
税理士・社会保険労務士等または、協同組合や商店会などの代表者による「確認書」変更前後の名称を確認
「個人事業の開業・廃業等届出書控」のコピー
(届出書の区分が開業に〇があり、事業継承先のと住所・氏名が一致していること)

 

個人と法人で等級が引きげないことで事故歴をリセットする方法

個人と法人では、個人事業主が法人化した場合や、法人を解散して個人事業主になった場合しか等級を引き継げませんが、逆にこのルールを利用して、事故などで、5等級以下になった時に、事故歴をリセットすることができます。

個人と法人で等級が引きげないことで事故歴をリセットする方法

これは、自動車保険の等級が個人と法人で引きげないルールを利用した、事故歴のリセット方法ですが、法人の社長やその家族が、個人契約で事故を起こして、5等級以下になり、保険料が高くなる場合に、法人の契約に切り替えておくことで、事故歴のない6(S)等級で契約できるのです。

この方法を使う場合は、契約する車の車検証の所有者は必ず法人名義にしておかないと、個人契約の事故歴をリセットすることができませんので、注意が必要です。

13か月経過すれば個人契約に戻せる

自動車保険の事故歴は、自動車保険を解約した日や満期が来て継続じなかった満期日から13か月経過すると、自動的にリセットされますので、法人契約を13か月続けた時点で、個人契約に切り替えても6(S)等級で契約することができます。

まとめ

自動車保険は、個人で契約している等級を法人契約に引き継ぐことができませんが、個人事業主がその事業を法人化した場合と、法人が解散して、個人事業主として事業を引き継ぐ時に等級の引き継ぎをすることができます。

この個人と法人の等級引き継ぎの手続きは、会社を設立したり、解散した時に行うことが必要ですが、結構手続きを忘れがちです。

そんな場合でも、会社設立や解散から1年以内とかであれば、遡及して手続きをしてくれる損害保険会社もありますので、加入している会社に確認してみてください。

また、家族が法人を経営している場合には、個人と法人が等級引き継ぎできないルールを活用して、事故歴をリセットすることも可能なので、うまく利用すれば保険料を節約することもできますね。

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5 件のコメント

  • 素晴らしいまとめのブログありがとうございます!
    このような、正確かつ、無駄のない、的確な情報を求めていました。
    ああ、うれしいなあ。ゆっくり端から全部読ませていただきますね♪

    今日は「個人と法人で等級が引き継げないことで事故歴をリセットする方法」
    の情報を探していました。

    保険屋として未熟な仕事をしてしまいました。
    勝手ながら懺悔を綴らせていただきます。。

    —————————————–
    ・父
    ・娘(父と同居)法人経営
    —————————————–

    保険料未納により解除となった、高齢な父の自動車保険(事故有3年)。
    その車両を、娘の法人で使いたいとのことで、法人にて6S等級で契約。
    デメ逃れできると思いまして、その際、車検証一筆にて対応。


    その後、等級訂正依頼あり。もしくは名変済車検証提出要と。
    娘さんと相談し、今回は事故有で等級訂正でよし(あまり長く乗らない予定)とのことで等級訂正。
    間もなくしてその自動車保険は解約となりました。
    —————————————–

    しかし2週間後に、同車両を、法人名義に変更したのでやはり保険を掛けたいとの意向。
    その際に、デメ継承のイメージが全く頭から消えておりまして


    名変したのだから6S♪と純新規で契約しました。
    —————————————–

    その後、またまた、事故有へ等級訂正の連絡。
    ここで、ハっと気付きまして、、そうか前回事故有で入れちゃったんだ。。と。
    —————————————–

    ここでご質問なのですが
    ③で個人から法人へ車検証名義変更をしているのだから、という主張で
    ①②で事故有に等級訂正済み契約(しかも既に解約済み)を
    事故無し6Sに戻す訂正なんて、できないですよね。。。

    あぁぁ、なにか手立てがないかなあ。

    いきなりの長文失礼いたしました。
    元大手損保支社長さまのブログを読み込んで
    お客様に最適な情報提供をしていけるようにつとめます!
    ありがとうございました(^^)!

  • ご質問有難うございます。

    「個人から法人へ車検証名義変更をしているのだから、という主張で
    事故有に等級訂正済み契約を事故無し6Sに戻す訂正」についてですが、

    ご希望の手続きは
    ➀解約の取り消し
    ➁等級の訂正(事故あり⇒6S等級)
    とのことですが、保険会社の手続き上は「取り消し再計上」になり、、
    一般的に(保険会社によりますが)社内のルールで「社内稟議扱い」
    となると思います。

    また、社内稟議を通す理由として「契約者に落ち度がない」ことを最優先
    としますので、「代理店の判断ミス」を稟議承認の条件とすることが
    多いようです。

    営業現場では、「社内稟議」の承認を取ことを非常に嫌がりますが、
    所属の営業店に交渉しては如何でしょうか?

    あくまで所属の保険会社で取り扱いは異なりますが、可能性はゼロではないと
    思います。

    以上参考になれば・・・

  • 記事読ませて頂きました。
    大変勉強になりました。ありがとうございます。
    丁度私も(半ば貰い事故のような物もありますが)不注意で来年から1等級になってしまいます。
    職場的に車が無いと通勤不可能なため、絶望しておりましたが、折しも本業の傍ら夫婦で不動産経営をやっておりまして、妻を代表者にして法人化を計画しているタイミングでしたので一筋の光明を見た感じです。

    等級リセットの順番としては
    ①法人定款作成、会社印鑑作成→書類提出→法人設立
    ②現在の個人名義の車の名義を法人に変更。
    ③法人名義になった自動車を、法人名義で新たに保険加入。
    ④以前の個人名義の保険を解約

    といった手順で宜しいでしょうか?
    お忙しい所誠に申し訳御座いません。

  • ご質問有難うございます。
    1等級リセットの流れはご記載のとおりで大丈夫だと思います。

    念のため以下のことをおすすめします。
    ➀法人契約は個人で加入していた保険会社とは異なる保険会社で加入する。
    ➁法人契約の記名被保険者(賠償被保険者)は個人名にしない(記名被保険者を奥様などにすると1等級を引き継いでしまいます)
     *等級は契約者ではなく記名被保険者が引き継ぎます

    車検証の名義は必ず法人契約前に変更してください。

    個人契約の1等級は解約後13か月経過すると自動的にリセットされます。

    以上参考になれば幸いです。

  • お忙しい中大変ありがとうございます。法人契約の記名被保険者を個人名にせず法人名にすべしという事でしょうか?
    これは、自動車保険契約の代理店で行う手続きでしょうか。

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    ABOUT US

    早期退職して田舎暮らしの元大手損保支社長
    大手損保を早期退職して、田舎暮らしをしている元支社長が、自動車保険に賢く加入する方法を解説しています。 趣味は野菜作りとバイクのツーリングで、冬季はオーディオの自作と温泉巡りをして楽しんでいます。