高速道路での落下物が原因の事故 過失割合と自動車保険の適用は?

高速道路事故の過失割合

2017年10月18日 高速道路の落下物が原因で親子2人が死亡した

2017年10月18日午後8時15分ごろ、岡山県津山市坪井上の中国自動車道上り線で、大型トレーラー(約20トン)が横転し、路肩にいた広島市の親子2人をはねて死亡させる痛ましい事故が発生しました。

親子2人は高速道路上に落ちていたタイヤと接触して、車を損傷し、走行車線上に車を置いて、路肩に避難していたが、後続の大型トレーラーが同じタイヤに乗り上げ横転し、不幸にも路肩に避難していた親子をひいてしまいました。

高速道路における落下物は年間30万件以上発生しており、その落下物が原因の事故も多発していますが、高速道路で落下物を放置して、その結果事故が発生した場合、責任は誰にあるのでしょうか?

高速道路上の落下物による事故の過失割合は?

高速道路では、高速での走行が許されているので、落下物に接触しなくても、回避行動の結果、事故に発展することも十分に考えられることから、非接触事故も同様の過失割合が適用されます。

高速道路上の落下物による事故の過失割合は?
基本過失割合直進車Ⓐ 40落下物の原因車Ⓑ  60
修正要素視認不良  +10
追い越し車線  +10
Aが自動二輪車  +10
Bがその他著しい過失・重過失  +10~20
Aが速度違反 +10 
Bがその他著しい過失・重過失 +10~20 

基本過失割合は、落下物に接触した後続車が40%で、落下物を落とした車が60%となっていますが、夜間などの視認不良や、追い越し車線の場合などの修正要素があります。

死亡した親子2人への賠償はどうなる?

それでは、死亡した親子2人への賠償はどうなるかを考えてみます。

直接の加害者は、落下していたタイヤに乗り上げ、横転して親子2人を死亡に至らしめた大型トレーラーですが、タイヤを落下させたトラックにも過失が発生しますので、大型トレーラーとタイヤを落下させた車の「共同不法行為」となり、両者が共同で賠償する義務があります。

タイヤを落下させたトラックの運転手は、事故の翌日の19日には特定され、警察の事情聴取を受けていますが、走行中にタイヤを落下させたことには、気が付かなかったと答えています。

大型トレーラーとタイヤを落下させたトラックの過失割合は、午後8時で夜間であったことと、雨天で見通しが悪かったこと、落下したタイヤが追い越し車線であったことから、上記基本基本過失割合の大型トレーラーが40%でトラック60%を修正して、大型トレーラー20%とトラック80%程度になると予想されます。

今回の中国自動車道の事故は、その損害が大きいために、裁判に発展する可能性が強いと思いますが、大型トレーラーとタイヤを落下させたトラックの過失割合は、両者の走行していたスピードや、大型トレーラーの事故退避可能性などを総合的に判断して決定されると思います。

高速道路上の落下物による事故で自動車保険は使えるのか?

高速道路に限らず、走行する車からの落下物が原因で発生した事故は、自動車保険の対人賠償責任保険や対物賠償責任保険の支払い要件である、「契約車両の所有・使用・管理に起因する事故」と「法律上の賠償責任が発生する」に該当するかどうかが判断基準になります。

積載物などの落下は、基本的には「契約車両の所有・使用・管理に起因する事故」に該当しますので、「法律上の賠償責任が発生する」かどうかが実際の判断基準になります。

今回の中国自動車道での事故は、トラックがタイヤを落下させたのが、事故の当日であり、十分に「法律上の賠償責任が発生する」と判断されますので、横転して直接親子2人を死亡させた大型トレーラーと、タイヤを落下させたトラックの両方が加入する自動車保険の支払い対象になります。

また、落下していたタイヤに大型トレーラーが、接触していなくても、その落下しているタイヤを避けようとして、ハンドル操作を誤って横転して起きた場合でも、同じく自動車保険の支払い対象になります。

走行する車からの落下物が原因の事故で、法律上の損害賠償責任が発生しない場合

走行する車からの落下物が原因で起きた事故でも、その落下物がどのくらいの時間路上に放置されていたかが、「法律上の賠償責任」が発生するするかどうかの判断基準になります。

当然高速道路に限らず、一般道でも、道路の管理者が存在していますので、長時間落下物が放置されていれば、道路の管理者が「法律上の賠償責任」を負うことになります。

<参考判例>
走行不能の大型貨物車が国道上に放置されていたが、約87時間後に原付バイクが荷台に衝突して、原付バイクの運転者が死亡した事故で、国道の管理者に賠償責任を認めた(大阪高裁 昭和47年3月28日判決)

まとめ

高速道だけでなく、一般道でも、走行する車からの落下物は後を絶たず、その落下物が原因の事故も多発していますが、路上に荷物などを落下させた場合に適用される罰則は、結構重くなっています。

「自動車の運転手は、高速道路等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならないと規定しており、運転者は同義務を守らなければならないとされていて、違反すると3カ月以下の懲役、または5万円以下の罰金など重い罰則が適用されます。(道路交通法75条の10)

また、今回の中国自動車道の事故で、タイヤを落下させたトラックの運転手は「過失運転致死傷罪」に問われる可能性もあります。

ちょっとした注意を払うことで、簡単に防げる事故ですが、それを怠ったことで大きな代償を払うことになりますので、高速道路に限らず一般道でも、積載物のチェックを怠らないことが大切です。

また、路上にはどんな落下物が放置されているかわかりませんので、注意して運転することも必要ですね。

参照文献:【民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準】 判例タイムズ社

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早期退職して田舎暮らしの元大手損保支社長
大手損保を早期退職して、田舎暮らしをしている元支社長が、自動車保険に賢く加入する方法を解説しています。 趣味は野菜作りとバイクのツーリングで、冬季はオーディオの自作と温泉巡りをして楽しんでいます。